今を生きる名言集|過去や未来にとらわれず、今日を大切にする言葉

窓辺の光の中で静かな時間を過ごすイメージ

執筆・編集:meigen89

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湯気の立っていたお茶が、気づけば冷めている。昨日の言い方を思い返したり、明日の予定を心配したりしているうちに、目の前の時間が通り過ぎてしまうことがあります。

そんな日に「今を生きる」という言葉まで、できていない自分への注意のように感じる必要はありません。過去を振り返ることにも、未来に備えることにも意味があります。そのうえで、ときどき目の前の生活へ戻ってくる。食事を味わい、仕事に手をつけ、大切な人の話を聞く。休むと決めた時間には、休む。

この記事では、モンテーニュ、ソロー、『中部』第131経に伝わるブッダの教え、パスカル、ホラティウス、セネカの6つの言葉から、「今日を大切にする」とはどういうことかを考えます。外国語の日本語訳は、原文をもとにした当サイト訳です。

目の前の時間を味わうための名言

1.していることに戻る――モンテーニュ

踊るときは、踊る。

Quand je dance, je dance ;

出典:モンテーニュ『エセー』第3巻第13章「経験について」/当サイト訳。Wikisource原文

短い言葉ですが、前後まで読むと意味が立体的になります。モンテーニュは、眠るときは眠り、一人で美しい果樹園を歩くとき、途中で別の出来事について考えていたなら、また散歩や果樹園、その静けさや自分自身へ思考を戻すと書いています。

つまり、一度も気がそれないことを求めているのではありません。気づいたところから、していることへ戻る。その柔らかさがあります。

休憩中なのに頭の中で仕事を続けているなら、まず飲み物を一口味わう。窓の外を見る。休憩を「次の仕事までの待ち時間」にしない。そんな受け止め方ができます。

モンテーニュの別の言葉は、モンテーニュの名言集でも紹介しています。

2.ただ過ごすのではなく、日々に目を開く――ソロー

目覚めていることは、生きていることである。

To be awake is to be alive.

出典:Henry David Thoreau, Walden, “Where I Lived, and What I Lived For”/当サイト訳。Project Gutenberg原文

ここでいう「目覚め」は、単に睡眠時間を削ることではありません。直前でソローは、肉体労働のために起きている状態と、知的・詩的・精神的な意味で目覚めている状態を区別しています。

現代の生活に引き寄せるなら、「何を終えたか」だけでなく、「どんなふうにその日を過ごしたか」にも目を向ける言葉として読めます。

いつもの帰り道でも、空の色に気づく。食事を急いで片づけるのではなく、一口だけ味わう。大きな感動を探さなくても、今日の中でちゃんと見たもの、聞いたもの、味わったものを一つ持つ。それも日々に目を開く方法です。

自然や暮らしを見つめる視点は、ソローの名言集でも読めます。

過去や未来にとらわれすぎないための名言

3.過去を追い求めず、未来に心を預けすぎない――『中部』第131経

過去を追い求めず、未来を待ち望まない。

Atītaṃ nānvāgameyya, nappaṭikaṅkhe anāgataṃ;

出典:『中部』第131経 Bhaddekaratta Sutta 冒頭詩句/当サイト訳。パーリ語本文

この言葉を「将来の計画を立ててはいけない」と読むと、原典の文脈から離れてしまいます。経典では、過去の身体・感覚・認識などを「かつての自分」として追い求めることや、未来の自分について期待を膨らませて心を奪われるあり方が説明されています。

さらに現在についても、目の前の身体や心の働きを固定した「自分そのもの」と見なしてとらわれることが論じられています。単純な「現在だけ考えよう」という標語より、もう少し深い教えです。

日常への応用としては、昔の自分や、まだ実現していない理想の自分だけを人生の基準にしない、と考えてみるとよいでしょう。以前よりうまくできない日でも、理想に届いていない日でも、今の自分に必要なことは選べます。

4.現在を、未来のための通過点にしない――パスカル

私たちは決して、現在にとどまっていない。

Nous ne nous tenons jamais au temps présent.

出典:パスカル『パンセ』ブランシュヴィック版、断章172/当サイト訳。Wikisource原文

パスカルはこの断章で、人が未来の到来を急ぎ、過去を引き留めようとし、現在について考えるときさえ未来を整えるための手段にしてしまう姿を描いています。そして、いつも「生きる準備」をしながら、生きることそのものを先へ送ってしまうと指摘します。

だからといって、準備や計画をやめる必要はありません。旅行には貯金が必要ですし、仕事を変えるなら情報収集も必要です。ただ、今日のすべてを準備に使い切らなくてもよいのです。

「落ち着いたら一緒に過ごそう」と思っている相手がいるなら、今夜少し話す時間を取る。大きな予定はそのままにして、今日の中にも大切なものを置いておく。人生の本番を、いつも少し先に置かないための工夫です。

今日という時間を先送りしないための名言

5.今日という一日を受け取る――ホラティウス

今日を摘み取れ。明日には、できるだけ頼らずに。

carpe diem, quam minimum credula postero.

出典:ホラティウス『歌集』第1巻第11歌、第8行/当サイト訳。The Latin Library原文

「カルペ・ディエム」として知られるこの句は、レウコノエという相手に向けた詩の結びです。ホラティウスは、神々が定めた寿命を占いで知ろうとしないよう語り、話している間にも時間は逃げていくとして、この一行へ進みます。

ここから「今日を楽しむなら何をしてもよい」と広げすぎる必要はありません。むしろ、確実ではない明日だけに心を預け、今日受け取れる時間を理由もなく遠ざけないこと、と読めます。

会いたい人がいるなら日程を相談する。読みたい本があるなら数ページ開く。天気のよい日に少し外へ出る。将来の楽しみを計画することも、今日の一部です。明日を考えないのではなく、明日が来るのを待つだけで今日を空白にしない、という姿勢です。

6.「いつか」ではなく、今日の一歩を選ぶ――セネカ

先延ばしにしている間に、人生は過ぎていく。

Dum differtur vita transcurrit.

出典:セネカ『ルキリウスへの倫理書簡』第1書簡、第3節/当サイト訳。The Latin Library原文

第1書簡は、失われていく時間を自分のものとして取り戻すようルキリウスに勧める手紙です。セネカは「明日に頼ることを少なくするには、今日をつかむことだ」と語ったあと、この短い一文を置きます。

一方で同じ手紙の第4節では、自分も時間を失うことがあると率直に認めています。完璧な時間管理ができる人だけが語る説教ではありません。

気持ちが整ったら始めよう、時間がたっぷりできたら取りかかろう、と待っていることがあるなら、今日できる形まで小さくしてみる余地があります。文章を仕上げられないなら最初の一文を書く。反対に、後回しにしていたのが休息なら、今日はそこで仕事を切り上げる。それも時間を自分に取り戻す行動です。

引用元の書物を詳しく知りたい方は、『ルキリウスへの倫理書簡』の解説も参考になります。

「今を生きる」を日常でどう使うか

仕事中は、一つの作業に閉じこもるのではなく、目の前の状況に応える

たとえば、作業中にお客様から声をかけられたとします。手を止めて応対することは、「今に集中できなかった」という失敗ではありません。その場の状況が変われば、必要な行動も変わるからです。

今に集中することを、周囲を見ないことと取り違えないようにしたいものです。いま何に応えるべきかを選び、対応が終わったら元の仕事へ戻る。その切り替えまで含めて「今」です。

休息を、働いた後にだけ許されるものにしない

やることが残っていると、休む時間がもったいなく感じられることがあります。それでも、休息まで「次にどれだけ働けるか」だけで評価すると、いつまでも仕事から離れられません。

音楽を聴く。何も決めずに座る。好きなものを食べる。そこで成果を持ち帰らなくてもかまいません。仕事のことが浮かんだら、忘れると困る用件だけを書き留め、今は続きをしないと決める。考えが完全に消えることを、休息の開始条件にしないことです。

大切な人との時間は、短くても相手に向き合う

忙しい日には、長い時間を一緒に過ごせないこともあります。それでも、話しかけられたら一度画面から目を離す、帰宅したらその日の出来事を一つ聞く、といった短い関わりは選べます。

いつでも完璧に応じる必要はありません。大切なのは、相手との時間をほかの用事の合間に流し続けず、ときどき自分から選び直すことです。

今を生きることと、将来を考えることは矛盾しない

計画を立てる時間には、将来のことを考えてよいのです。方針を決めたら、今日することへ戻る。予定を立てること自体も、現在の行動です。

締め切りのある仕事なら、必要な手順と日程を確認し、今日の作業を一つ決める。考えられるすべての失敗を先に解決してから着手しようとしなくてもかまいません。

未来を考えないのではなく、未来のために今できることを選ぶ。自分で選べる行動と、思いどおりにはできない結果を分けたいときは、コントロールの二分法も役立ちます。

気がそれても、気づいたところから戻ればいい

「また別のことを考えていた」と気づいた瞬間まで、失敗の続きにする必要はありません。モンテーニュが散歩中に別の出来事を考えたあと、散歩や果樹園へ意識を戻したように、私たちもその都度、次を選び直せます。

いま必要な連絡をするのか、読んでいた本へ戻るのか、休憩を続けるのか。それまでの時間を取り戻そうと焦るより、ここからの時間をどう使うかを選ぶほうが現実的です。

まとめ|今日の中で、大切にする時間を一つ選ぶ

今を生きることを、新しい宿題にする必要はありません。過去を思い出す日も、先のことが気になる夜もあります。そのたびに自分を責めるのではなく、目の前にある暮らしへ少しずつ戻ってくる。

この記事を閉じたあと、大きな決意はいりません。手元の仕事を一つ進めるのか、休もうとしていた時間をきちんと取るのか、それとも誰かの話を聞くのか。今日の自分に合うものを一つ選んでみてください。

別の悩みや場面から言葉を探したい方は、テーマ・悩みから名言を探すもご覧ください。

出典・参考文献

外国語の日本語引用は、原文をもとにした当サイト訳です。引用後の生活場面や取り入れ方は、原典そのものではなく当サイトによる解説・応用です。