墨子の名言30選|兼愛・非攻・正義を考える思想の言葉

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非攻・節用・正義を貫く墨子の名言

21. 小さな盗みを非難するなら、大きな侵略も同じ基準で見る

If one person enters another’s orchard and steals peaches and plums, the public condemns it, and those who govern punish it.

一人が他人の果樹園へ入り桃や李を盗めば、人々は非難し、為政者は捕らえて罰する。

出典:『墨子』非攻上篇「今有一人,入人園圃,竊其桃李,眾聞則非之,上為政者得則罰之。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

墨子は、小さな盗みを悪とする人が、国家による大規模な侵略を称賛する矛盾を問い詰めます。規模や立場が変わっても、同じ倫理基準を適用できるかという問題です。

自分に有利なときだけ基準を変えていないか、一度振り返る。正義は、相手によって物差しを替えないところから始まります。

22. 犠牲が増えるほど、不義も重くなる

To kill one person is called unrighteous and incurs one capital crime; by the same reasoning, killing ten persons is ten times the unrighteousness.

一人を殺せば不義と呼ばれ、一つの死罪に当たる。同じ理屈なら、十人を殺すことは十倍の不義である。

出典:『墨子』非攻上篇「殺一人謂之不義,必有一死罪矣;若以此說往,殺十人十重不義。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

被害の規模が大きくなると、政治や名誉の言葉によって責任が見えにくくなることがあります。墨子は単純な論理を使い、その矛盾を明らかにしました。

数字が大きい問題ほど抽象化せず、一人の生活へ置き換えて考える。被害を具体的に見ることが、判断の感覚を取り戻します。

23. 国を攻める大きな不義だけを、正義と呼んではならない

When people reach the great unrighteousness of attacking a state, they fail to condemn it and instead praise it as righteous.

国を攻めるという大きな不義に至ると、それを非難せず、かえって称賛して正義と呼ぶ。

出典:『墨子』非攻上篇「今至大為不義攻國,則弗知非,從而譽之,謂之義。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

集団の熱狂や権威ある言葉は、個人なら悪いと分かる行為を正しく見せることがあります。だからこそ、行為そのものと、それを飾る名称を分ける必要があります。

強い言葉に動かされたときは、「実際に誰が何を失うのか」を一つ確認する。名前ではなく結果を見る習慣が、判断を守ります。

24. 役に立たない費用を除けば、使える力は増える

Remove expenditures that serve no useful purpose, and available resources can be doubled.

役に立たない費用を取り除けば、使える資源を倍にできる。

出典:『墨子』節用上篇「去其無用之費,足以倍之。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

節約は、ただ我慢することではありません。価値を生まない支出を減らし、本当に必要なところへ資源を移す設計です。

今日の固定費や作業手順から、使っていないものを一つ探す。増やす前に無駄を減らすと、時間とお金の余白が戻ります。

25. 人々の生活を支えない追加費用は、増やさない

When people’s needs are sufficiently supplied, stop there. A wise ruler does not add expenses that add no benefit to the people.

民の生活を十分に支えられるなら、そこで止める。民の利益を増やさない追加費用を、聖王は行わない。

出典:『墨子』節用中篇「凡足以奉給民用,則止。諸加費不加于民利者,聖王弗為。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

高価で豪華であることと、暮らしに役立つことは同じではありません。墨子は、費用の正当性を人々の利益によって判断しました。

買うか迷ったときは、「何が改善するのか」を一文で答えてみる。答えが曖昧なら、今日は買わずに保留するだけでも十分です。

判断・運命・実践を考える墨子の名言

26. 意見には、根拠・確かめ方・実際の効果が必要である

A standard must be established. Without a standard, right and wrong, benefit and harm cannot be clearly known. Therefore every claim must have three tests: a basis, verification, and application.

基準を立てなければならない。基準なしに語れば、是非と利害を明らかにできない。だから言説には、根拠・検証・実用という三つの基準が必要である。

出典:『墨子』非命上篇「必立儀。言而毋儀,是非利害之辨,不可得而明知也。故言必有三表:有本之者,有原之者,有用之者。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

墨子の「三表」は、主張を権威だけで信じず、過去の事例、実際の観察、社会での効果から確かめる方法です。情報が多い時代にも通じる実証的な姿勢があります。

気になる情報を見たら、出典・観察できる事実・実際の効果を一つずつ確認する。すぐ拡散せず立ち止まることも、立派な行動です。

27. 豊かさと秩序を望むなら、何も変えられないという考えを退ける

If people sincerely desire the world to be rich rather than poor, and orderly rather than chaotic, they cannot leave fatalistic doctrine unchallenged; it is a great harm to the world.

本当に天下の豊かさを望み、貧しさを嫌い、秩序を望み、乱れを嫌うなら、運命ですべてが決まるという説を退けなければならない。それは天下の大きな害である。

出典:『墨子』非命上篇「忠實欲天下之富而惡其貧,欲天下之治而惡其亂,執有命者之言,不可不非,此天下之大害也。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

墨子が批判したのは、運命への信仰そのものより、「どうせ決まっている」と行動を放棄する態度です。変えられないものがあっても、改善できる領域まで手放す必要はありません。

結果を保証できなくても、今日できる一手は選べます。連絡を一件送る、資料を一行直すという行動へ戻ってみてください。

28. 時代も民も同じでも、指導者と行動によって結果は変わる

The times had not changed and the people had not altered; yet under Jie and Zhou the world was chaotic, while under Tang and Wu it was orderly. How can this be called fixed fate?

時代も民も変わっていないのに、桀・紂のもとでは天下が乱れ、湯・武のもとでは治まった。これを固定された運命と言えるだろうか。

出典:『墨子』非命上篇「此世未易民未渝,在於桀紂,則天下亂;在於湯武,則天下治,豈可謂有命哉!」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

同じ条件でも、判断と制度と行動によって結果は変わります。環境の制約を認めながらも、人間の働きかけを無意味にしないのが墨子の現実主義です。

「条件が悪いから無理」と感じたら、変えられる部分を一つだけ囲む。コントロールの二分法で、自分の側にある選択へ戻れます。

29. あらゆる物事の中で、正義より尊いものはない

Among all affairs, nothing is more valuable than righteousness.

あらゆる物事の中で、正義より尊いものはない。

出典:『墨子』貴義篇「萬事莫貴於義。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

利益や評判が大きくても、不正によって得るなら長くは支えられません。墨子にとって義は抽象的な美徳ではなく、人々の利益を守り害を減らす実践基準でした。

迷う場面では、「得をするか」だけでなく「誰かに不当な害を与えないか」を加える。判断軸を一つ増やすだけで、選択の質は変わります。

30. 少数を殺さない義を語りながら、多数を殺す戦争を許してはならない

To destroy what is scarce in order to contend for what is already abundant cannot be called wise; to attack an innocent state cannot be called humane. A principle that refuses to kill a few yet permits the killing of many cannot be called understanding what is right.

不足している民を殺し、余っている土地を争うことは知恵とは言えない。罪のない宋を攻めることは仁とは言えない。少数を殺さないという義を掲げながら、多数を殺すことは道理を知るとは言えない。

出典:『墨子』公輸篇「殺所不足,而爭所有餘,不可謂智。宋無罪而攻之,不可謂仁。義不殺少而殺眾,不可謂知類。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

墨子は公輸盤の矛盾を、相手自身が掲げる倫理から明らかにしました。理念を語るなら、個人にも国家にも同じ基準を適用しなければなりません。

正しさを主張するときほど、自分にも同じ物差しを当ててみる。その一度の点検が、独善を避け、言葉と行動を一致させます。

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まとめ:墨子の名言は、正しさを現実の利益へ変える言葉

墨子の思想は、正義を立派な言葉のままにしません。誰が利益を受け、誰が害を受けるのかを確かめ、侵略や差別、無駄を減らす具体的な行動へ落とし込みます。

自分だけを守ろうとするほど、関係や社会の争いは増えやすくなります。相手の立場を一度想像し、同じ倫理基準を自分にも相手にも当てる。その小さな公平さが、兼愛の実践です。

この30の言葉から一つだけ選び、今日の判断へ使ってみてください。大きな改革でなくても、無駄を一つ減らす、相手の負担を一つ軽くする、正しいと思うことを一分だけ始める。その行動が、現実を一ミリ善くします。ほかの思想も読みたい方は、思想・哲学から名言を探すページ名言を探す総合ページも利用できます。

出典・参考文献

参考:中国哲学書電子化計画(Chinese Text Project)『墨子』修身・所染・法儀・七患・尚賢上・兼愛上・兼愛中・非攻上・節用上・節用中・非命上・貴義・公輸、Stanford Encyclopedia of Philosophy “Mohism”。本文の英訳・日本語訳は、伝世本文を参照した筆者訳です。

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