墨子の名言30選|兼愛・非攻・正義を考える思想の言葉

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執筆・編集:meigen89

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墨子は、中国戦国時代に活動した思想家で、墨家の祖とされる人物です。古典『墨子』には、すべての人を分け隔てなく大切にする「兼愛」、侵略戦争を否定する「非攻」、能力ある人を登用する「尚賢」、無駄を減らす「節用」など、現実の社会をより良くするための考え方が記録されています。

ただし、現在伝わる『墨子』は墨子本人だけでなく、後代の墨家集団が受け継いだ議論も含む文献です。この記事では、歴史上の墨翟がすべてを直接語ったとは断定せず、『墨子』に記録された言葉として、章名と原文を確認できる30個を選びました。

不公平や争いに疲れたとき、正しいことを行動へ移せないとき、墨子の言葉は「誰にどんな利益と害があるか」という具体的な基準へ戻してくれます。孔子の名言老子の名言と読み比べると、中国古典における人間関係と社会の見方の違いも見えやすくなります。

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行動と修身を支える墨子の名言

1. 学びは、行動によって初めて根を持つ

Even when a scholar has learning, conduct remains the foundation.

学ぶ者に知識があっても、行動こそが根本である。

出典:『墨子』修身篇「士雖有學,而行為本焉。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

知識を集めるだけでは、現実はまだ変わりません。墨家が重んじたのは、正しいと考えたことを生活や社会の中で実行する姿勢でした。

準備が足りないと感じる日も、まず一分だけ手を動かしてみる。小さな着手によって、学びは自分の力へ変わり始めます。

2. 終わりまで続けられないなら、仕事を増やしすぎない

Do not undertake many tasks when they have neither a clear beginning nor a completed end.

始まりと終わりを定めないまま、多くの仕事へ手を広げてはならない。

出典:『墨子』修身篇「事無終始,無務多業。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

やることを増やすほど前進しているように見えても、未完了の仕事が積み上がれば注意は分散します。墨子の言葉は、量より完了を重んじる実務的な教えです。

今日は新しい課題を足す前に、途中の一件を閉じてみてください。より少なく、しかしより良く進めるほうが、結果として遠くまで行けます。

3. 志が弱ければ知恵は届かず、言葉に信頼がなければ行動は実らない

Without firmness of purpose, wisdom does not reach far; without trustworthiness in speech, action bears no result.

志が強くなければ知恵は十分に働かず、言葉に信頼がなければ行動は実を結ばない。

出典:『墨子』修身篇「志不強者智不達,言不信者行不果。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

能力だけでは、長い仕事を支えきれません。何のために続けるのかという志と、言ったことを守る信頼があってこそ、知恵や行動が周囲へ届きます。

大きな決意を作る必要はありません。今日すると言った一つを終えることが、志と信頼を同時に育てます。

4. 分け合えない人とは、深い友になりにくい

One who possesses resources but cannot share them with others is not sufficient to be a friend.

財を持ちながら人と分け合えない者は、友とするに足りない。

出典:『墨子』修身篇「據財不能以分人者,不足與友。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

ここでいう財は、お金だけではありません。時間、知識、手助け、相手への配慮を必要なときに分かち合えるかどうかが、関係の質を表します。

無理な自己犠牲ではなく、余裕の範囲で一つ渡す。役立つ情報を一件共有するだけでも、信頼は少しずつ形になります。

5. 言葉ばかり先に進み、行動が遅ければ聞き入れられない

One who is eager in speech but slow in action will not be heard, however eloquent.

言葉を多くしながら行動を遅らせる者は、どれほど弁が立っても聞き入れられない。

出典:『墨子』修身篇「務言而緩行,雖辯必不聽。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

説明が長くなるほど、実行した気分になってしまうことがあります。しかし周囲が信頼するのは、整った言葉より、実際に積み重なった行動です。

次の計画を話す前に、最初の作業を一つ済ませる。動くことが善進であり、その行動が最も強い説明になります。

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短い名言だけでなく、兼愛・非攻・尚賢・節用がどのような議論から導かれたのかを本文で確かめると、墨子の実践的な思想がつながって見えてきます。訳や注釈を比べながら、自分に合う一冊を探せます。

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環境・基準・備えを整える墨子の名言

6. 人は、触れる環境によって色を変える

Dyed in blue, it becomes blue; dyed in yellow, it becomes yellow. What enters changes it, and its color changes as well. Therefore one must be careful about dyeing.

青に染めれば青くなり、黄に染めれば黄色くなる。入ってくるものによって変わり、色も変わる。だから染まり方には慎重でなければならない。

出典:『墨子』所染篇「染於蒼則蒼,染於黃則黃。所入者變,其色亦變。故染不可不慎也。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

意志だけで自分を守ろうとしても、日々見る情報や付き合う人の影響は避けられません。行動科学の観点でも、環境は習慣を支える重要な条件です。

自分を責める前に、目に入るものを一つ変えてみる。作業画面だけを開く、通知を一つ切るといった環境調整が、良い色へ染まる助けになります。

7. 良い友と交われば、暮らしと名声も整っていく

When a person’s friends all value benevolence and right conduct, act sincerely, and respect sound rules, the household improves daily, the person becomes secure, and the name gains honor.

友が皆、仁義を好み、誠実で慎み深く、正しい規律を重んじるなら、家は日ごとに良くなり、身は安らかになり、名も高まっていく。

出典:『墨子』所染篇「其友皆好仁義,淳謹畏令,則家日益,身日安,名日榮。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

人間関係は、気分だけでなく判断基準にも影響します。誠実に行動する人のそばにいれば、自分の当たり前も少しずつ整っていきます。

大勢と付き合う必要はありません。落ち着いて話せる人へ一通連絡することが、良い環境を選ぶ最小の一歩になります。

8. 仕事には、判断の基準が必要である

Those who undertake affairs cannot be without standards; no undertaking succeeds when it has no standard.

物事に取り組む者は基準を持たなければならない。基準がないまま成し遂げられる仕事はない。

出典:『墨子』法儀篇「天下從事者,不可以無法儀,無法儀而其事能成者無有也。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

気分だけで判断すると、その日の不安や疲れによって方向が変わります。基準とは、自分を縛る規則ではなく、迷ったときに戻れる線です。

今日の仕事に「ここまでできれば完了」という一文を置いてみてください。終点が見えると、完璧主義から現実的な行動へ戻りやすくなります。

9. 完全に上手でなくても、基準があれば以前より進める

The skilled can hit the mark; even the unskilled, though unable to hit it, can follow the model and still surpass their former selves.

巧みな者は基準に当てられる。巧みでない者も、当てられなくても手本に従って取り組めば、以前の自分を越えられる。

出典:『墨子』法儀篇「巧者能中之,不巧者雖不能中,放依以從事,猶逾己。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

基準は、できない人を責めるためだけのものではありません。未熟な段階でも、手本を見ながら進めれば、勘だけで動くより改善しやすくなります。

最初から独自性を求めず、良い見本を一つ選んでください。小さくラフに模倣し、そこから一か所だけ自分に合わせる方法で十分です。

10. 食料・土地・支出という土台を軽く見ない

Food must be attended to, the land must be worked diligently, and expenditure must be restrained.

食料をおろそかにせず、土地には力を尽くし、支出は節度を守らなければならない。

出典:『墨子』七患篇「食不可不務也,地不可不力也,用不可不節也。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

理想を語る前に、生活を支える基盤を守る。墨子の思想には、現実の資源や民衆の暮らしを重視する一貫した姿勢があります。

家計や仕事が不安なときは、すべてを一度に変えず、今日の支出を一つ確認する。足元の数字を見ることは、不安を具体的な行動へ変える方法です。

賢者と組織について考える墨子の名言

11. 賢い人が多いほど、組織の統治は厚くなる

When a state has many worthy and capable people, its governance is substantial; when it has few, its governance is weak.

国に賢良な人が多ければ統治は厚くなり、少なければ統治は薄くなる。

出典:『墨子』尚賢上篇「國有賢良之士眾,則國家之治厚;賢良之士寡,則國家之治薄。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

一人の英雄だけに頼る組織は、長く安定しません。知識と誠実さを持つ人を増やし、それぞれが力を出せる仕組みが必要です。

自分だけで抱えている作業を一つ見直し、共有できる手順を一行残してみる。人が力を発揮できる土台づくりも、大切な仕事です。

12. 地位は固定せず、能力に応じて任せる

Officials should not remain forever honored, nor should ordinary people remain forever low. Promote the capable and lower the incapable.

役人がいつまでも尊い地位にあり、民がいつまでも低い地位にあるべきではない。能力があれば登用し、能力がなければ下げる。

出典:『墨子』尚賢上篇「官無常貴,而民無終賤,有能則舉之,無能則下之。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

肩書きや出身ではなく、実際の能力と貢献を見る。これは古代の言葉でありながら、組織の公平性を考える現代的な視点にもつながります。

人を評価するときは、印象ではなく具体的な行動を一つ書き出す。事実に戻るほど、好き嫌いによる判断を減らせます。

13. 農民や職人であっても、能力があれば登用する

Even among farmers and artisans, those who are capable should be raised to office.

農民や職人の中にいる者であっても、能力があれば登用する。

出典:『墨子』尚賢上篇「雖在農與工肆之人,有能則舉之。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

才能は、肩書きのある場所だけに存在するわけではありません。普段見過ごされている人の経験や技能にも、問題を解く力があります。

会議や家庭で、普段あまり話さない人へ意見を一度尋ねてみる。多様な視点を迎える小さな行動が、より良い判断につながります。

14. 乱れを治すには、まず原因を知らなければならない

Only by knowing where disorder arises can it be governed; without knowing its source, it cannot be governed.

乱れがどこから起こるかを知ってこそ治められる。起点を知らなければ、治めることはできない。

出典:『墨子』兼愛上篇「必知亂之所自起,焉能治之;不知亂之所自起,則弗能治。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

目に見える症状だけを抑えても、同じ問題は繰り返されます。墨子は医師が病因を探るように、社会の乱れにも原因分析が必要だと説きました。

問題が起きたら、「何が悪いか」ではなく「どこから始まったか」を一行で考える。責任追及より構造を見ることで、改善可能な場所が見えます。

15. 争いの根には、互いを大切にしないことがある

From where does disorder arise? It arises from the absence of mutual care.

乱れはどこから起こるのか。互いに愛し合わないことから起こる。

出典:『墨子』兼愛上篇「亂何自起?起不相愛。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

墨子がいう愛は、感情的な好意だけではありません。自分の利益だけでなく、相手の損失も同じ現実として扱う実践的な配慮です。

意見が違う相手にも、「相手が守ろうとしているものは何か」と考えてみる。賛成できなくても、敵意だけで判断する状態から一歩離れられます。

兼愛と人間関係を見つめる墨子の名言

16. 人のために働くなら、利益を興し害を除く

Those who act humanely must promote what benefits the world and remove what harms it.

仁ある人が物事を行うなら、天下の利益を興し、天下の害を取り除かなければならない。

出典:『墨子』兼愛中篇「仁人之所以為事者,必興天下之利,除去天下之害。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

善意は、結果と切り離して考えられません。何をしたいかだけでなく、その行動が誰の負担を減らし、どの害を小さくするかを見る姿勢です。

今日の仕事を一つ選び、「誰にどんな利益があるか」を短く書く。目的が具体的になると、優先順位も決めやすくなります。

17. 他国・他家・他人を、自分の側と同じように見る

Regard another’s state as one’s own state, another’s family as one’s own family, and another’s person as one’s own person.

他人の国を自分の国のように、他人の家を自分の家のように、他人の身を自分の身のように見る。

出典:『墨子』兼愛中篇「視人之國若視其國,視人之家若視其家,視人之身若視其身。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

立場が変われば、同じ出来事の見え方も変わります。自分の側だけを基準にせず、相手が受ける損失や不安も判断に入れることが兼愛の核心です。

返信を書く前に、自分が受け取る側ならどう感じるかを一度読み返す。わずかな視点移動が、人間関係の摩擦を減らします。

18. 人を愛し利する行動は、自分にも返ってくる

Those who care for others are cared for in return; those who benefit others are benefited in return.

人を愛する者は人からも愛され、人を利する者は人からも利される。

出典:『墨子』兼愛中篇「夫愛人者,人亦從而愛之;利人者,人亦從而利之。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

親切をすれば必ず同じ相手から返るという保証ではありません。それでも、互いの利益を考える行動が増えるほど、協力しやすい関係は育ちます。

見返りを計算せず、相手の手間を一つ減らす。短い確認や分かりやすい説明が、信頼の循環を始めることがあります。

19. 力や富が、弱い人を傷つける理由になってはならない

The strong seize the weak, the rich mistreat the poor, the honored despise the lowly, and the cunning deceive the simple.

強い者は弱い者を押さえ、富む者は貧しい者を侮り、身分の高い者は低い者を見下し、ずる賢い者は素朴な者を欺く。

出典:『墨子』兼愛中篇「強必執弱,富必侮貧,貴必敖賤,詐必欺愚。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

これは推奨ではなく、互いを大切にしない社会で起こる害の列挙です。力の差がある場面ほど、強い側に自制と説明責任が求められます。

自分が決める側にいるときは、相手が断れる余地を一つ作る。権限を押しつけではなく配慮へ変える、小さな正義です。

20. 互いに大切にすれば治まり、憎み合えば乱れる

When all under Heaven care for one another, order follows; when they hate one another, disorder follows.

天下の人々が互いに愛し合えば治まり、互いに憎み合えば乱れる。

出典:『墨子』兼愛上篇「天下兼相愛則治,交相惡則亂。」(英訳・日本語訳ともに筆者訳)

社会の制度は重要ですが、日常の関係で敵意が増えれば、どれほど立派な規則があっても機能しにくくなります。墨子は秩序を、相互的な配慮の結果として捉えました。

大きな平和を語る前に、一つの会話で相手を決めつけない。今いる場所の敵意を一ミリ減らすことも、現実的な平和への行動です。

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