ラ・ブリュイエールの名言25選|人間観・幸福・言葉を磨く箴言

ラ・ブリュイエールの肖像画

目次 表示

目次へ

会話と人間判断を磨く

21. 良い会話は、相手の知性を引き出す

L’esprit de la conversation consiste bien moins à en montrer beaucoup qu’à en faire trouver aux autres.

会話の機知は、自分が多く示すことより、相手のなかにそれを見いださせることにある。

出典:『人さまざま』「社交と会話について」

会話を独演会にしないためには、相手が考え、言葉をつなげられる余地が必要です。良い問いや丁寧な相づちは、相手の知性を可視化します。

これは単なる聞き役になることでもありません。互いの考えが少しよくなるように場をつくることが、会話の創造性です。モリエールの風刺にも、社交の癖を映す同時代の眼があります。

22. 話す力と黙る判断は、どちらも要る

C’est une grande misère que de n’avoir pas assez d’esprit pour bien parler, ni assez de jugement pour se taire.

上手に話すだけの知性も、黙るだけの判断力もないことは、大きな不幸である。

出典:『人さまざま』「社交と会話について」

言葉の失敗は、表現力の不足だけから起こるのではありません。今は話すべきか、確かめるべきか、黙るべきかを選べないことも原因になります。

沈黙は逃避にもなりますが、配慮や検証の時間にもなります。発言の内容と同じように、発言の時機を選ぶ判断が対話の質を決めます。

23. 収支を見失えば、富も貧しさに変わる

Celui-là est riche qui reçoit plus qu’il ne consume ; celui-là est pauvre dont la dépense excède la recette.

消費する以上に受け取る人は豊かであり、収入を支出が上回る人は貧しい。

出典:『人さまざま』「財産について」

身分や見栄ではなく、入るものと出るものの関係を見る現実的な定義です。大きな収入も、それ以上の支出や欲望があれば安心を保証しません。

お金に限らず、時間や注意にも同じ構造があります。回復する以上に使い続けていないかを確かめることが、持続可能な暮らしの基礎になります。

24. 人は失敗から学び終える前に生を終える

On ne vit point assez pour profiter de ses fautes ; on en commet pendant tout le cours de sa vie, et tout ce que l’on peut faire à force de faillir, c’est de mourir corrigé.

自分の過ちを十分に生かせるほど、人は長く生きない。生涯を通じて過ちを犯し続け、失敗を重ねてできるのは、正された状態で死ぬことくらいである。

出典:『人さまざま』「人間について」

経験が自動的に知恵になるわけではありません。誤りを認め、原因を考え、次の行動を変えて初めて学びになります。それでも学びは生涯完成しません。

この厳しい一文には、人間への寛容もあります。完成を装うより、修正し続けることのほうが現実的です。モンテーニュの自己観察にも通じる姿勢です。

25. 人は第一印象だけでは判断できない

Il ne faut pas juger des hommes, comme d’un tableau ou d’une figure, sur une seule et première vue ; il y a là un intérieur et un cœur qu’il faut approfondir.

人を絵や姿のように、ただ一度の第一印象で判断してはならない。そこには深く見なければならない内面と心がある。

出典:『人さまざま』「人間について」

第一印象は素早い判断に役立つ一方、限られた情報から全体を推測します。控えめな人の価値を見落とし、巧みな演技を実質と取り違えることもあります。

人柄は、時間と状況のなかで少しずつ現れます。判断を急がず、複数の行動を観察することは、相手にも自分にも公平であるための習慣です。

関連書籍

まとめ

ラ・ブリュイエールの25の名言は、他人の虚栄を笑うだけでなく、自分のなかにも同じ弱さがあると気づかせます。正しい言葉を選び、相手の知性を引き出し、欲望と第一印象を少し疑う。その観察は、日常の判断を静かに精密にします。

同時代のラ・ロシュフコーが自己愛の動きを鋭く切り出したのに対し、ラ・ブリュイエールは会話や身振り、生活の場面から人間を描きました。短い箴言を急いで教訓にせず、自分の経験と照らして読むと、皮肉の奥にある人間理解が見えてきます。

出典・参考文献

1 2