ラ・ブリュイエールの名言25選|人間観・幸福・言葉を磨く箴言

ラ・ブリュイエールの肖像画

執筆・編集:meigen89

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ラ・ブリュイエール(1645–1696)は、17世紀フランスの宮廷と都市社会を観察し、『人さまざま(レ・カラクテール)』に凝縮された肖像と箴言を残した作家・モラリストです。短い一文のなかに、虚栄、友情、富、会話、幸福のしくみを映し出しました。

ここでは、本人の著作である『人さまざま』のフランス語原文を確認できるものに限り、25の言葉を選びました。作品中の人物の台詞や後世の要約は避け、章名を添えて出典を示しています。

四世紀近く前の観察でありながら、評判を気にする心や、話すことと聴くことの難しさは驚くほど現代的です。同じフランス・モラリストのラ・ロシュフコーパスカルと読み比べると、人間を見る角度の違いも見えてきます。

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書くこと、読むこと、言葉を選ぶこと

1. 新しさより、正確さを求める

Tout est dit, et l’on vient trop tard depuis plus de sept mille ans qu’il y a des hommes, et qui pensent.

すべてはすでに言われており、人間が考え始めて七千年以上たった今、私たちは遅れてやって来た。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

これは創作を諦める言葉ではありません。人間についての重要な主題は繰り返し語られてきたからこそ、書き手に残されているのは、奇抜さよりも見方と表現の正確さだという自戒です。

既知のテーマでも、自分の経験を通して丁寧に見直せば、言葉には固有の輪郭が生まれます。新規性への焦りを、観察の深さへ転換する一文です。

2. 他人を自分の好みに従わせない

Il faut chercher seulement à penser et à parler juste, sans vouloir amener les autres à notre goût et à nos sentiments ; c’est une trop grande entreprise.

ただ正しく考え、正しく語ることを求めるべきで、他人を自分の好みや感情へ引き寄せようとしてはならない。それはあまりに大きな企てである。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

意見を伝えることと、相手の感性まで支配することは違います。ラ・ブリュイエールは、自分にできるのは思考と言葉を整えるところまでだと境界を引きます。

説得に夢中になると、対話は勝敗へ傾きます。相手の自由を残したまま、こちらの言葉の精度を上げる姿勢が、むしろ長い信頼につながります。

3. 中途半端では耐えがたいものがある

Il y a de certaines choses dont la médiocrité est insupportable : la poésie, la musique, la peinture, le discours public.

凡庸であることが耐えがたいものがある。詩、音楽、絵画、そして公の言葉である。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

ここで批判されるのは、素朴さではなく、表現の責任を引き受けない態度です。人の心や公共の判断に触れる言葉ほど、安易な型や大げさな装飾ではごまかせません。

上手さだけでなく、何を伝えるのか、なぜ伝えるのかを吟味する必要があります。表現に力があるからこそ、作る側にも誠実さが求められます。

4. 良い趣味は、自然な成熟を感じ取る

Il y a dans l’art un point de perfection comme de bonté ou de maturité dans la nature : celui qui le sent et qui l’aime a le goût parfait.

芸術には、自然に善さや成熟の一点があるように、完成の一点がある。それを感じ、愛する人は確かな趣味を持つ。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

完成とは、要素を増やし続けることではなく、全体が最もよく釣り合う地点に達することです。自然の果実が熟すように、作品にも足すのをやめる時があります。

判断力は規則の暗記だけでは育ちません。優れたものに繰り返し触れ、その調和を感じ取る経験が、過不足を見抜く感覚を養います。

5. 一つの考えには、ふさわしい一つの表現がある

Entre toutes les différentes expressions qui peuvent rendre une seule de nos pensées, il n’y en a qu’une qui soit la bonne.

一つの考えを表しうるさまざまな言い方のうち、正しいものはただ一つしかない。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

同じ意味ならどの言葉でもよい、とは限りません。語感、文脈、相手との距離によって、ある表現だけが考えを余さず伝えることがあります。

完璧な語を一度で選べなくても、言い換えながら近づくことはできます。推敲とは飾りを加える作業ではなく、考えと語のずれを小さくする作業です。

ラ・ブリュイエールの著作を読み進めるなら、Amazon.co.jpで『人さまざま』を探すことができます。

読書と表現を深める眼

6. 心を高める読書は、それ自体が証明になる

Quand une lecture nous élève l’esprit et qu’elle vous inspire des sentiments nobles et courageux, ne cherchez pas une autre règle pour juger de l’ouvrage : il est bon et fait de main d’ouvrier.

読書が精神を高め、気高く勇気ある感情を呼び起こすなら、その作品を判断する別の基準を探す必要はない。それは良い作品であり、熟練の手によるものだ。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

作品の価値は、難しい理論だけで測られるものではありません。読後に視野が広がり、自分の行いを少し正したくなるなら、その変化自体が重要な手がかりになります。

ただし、感動の強さだけを唯一の基準にするのではなく、何が心を動かしたのかを振り返ることも大切です。読書体験を言葉にすると、好みは判断へ育ちます。

7. わからなさを認めるのも知性である

Les grands esprits ne l’entendent quelquefois pas tout entier : ils trouvent obscur ce qui est obscur, comme ils trouvent clair ce qui est clair.

優れた知性の持ち主でも、書物をすべて理解するとは限らない。曖昧なものを曖昧と認め、明らかなものを明らかと認める。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

理解したふりをしないことは、読解の弱さではなく強さです。文章の不明瞭さと、自分の知識不足とを区別しようとする態度が、学びを正確にします。

認知には「わかった気になる」傾向があります。立ち止まって不確かな箇所を示せる人ほど、誤解を修正し、新しい理解へ進みやすくなります。

8. 読者の位置から自分の文章を読む

Tout écrivain, pour écrire nettement, doit se mettre à la place de ses lecteurs, examiner son propre ouvrage comme quelque chose qui lui est nouveau, qu’il lit pour la première fois.

明晰に書くために、すべての書き手は読者の立場に身を置き、自分の作品を初めて読む新しいものとして検討しなければならない。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

書き手には背景知識があるため、省略した説明まで無意識に補えます。読者にはその補助線が見えません。視点を移すことで、初めて飛躍や曖昧さが現れます。

時間を置いて読み直す、声に出す、別の人に読んでもらうといった工夫は、この距離をつくります。伝わる文章は、読者への想像力から生まれます。

9. 書く力だけでなく、書かない判断も価値になる

La gloire ou le mérite de certains hommes est de bien écrire ; et de quelques autres, c’est de n’écrire point.

ある人々の栄誉や長所はよく書くことにあり、別の人々の長所は書かないことにある。

出典:『人さまざま』「精神の作品について」

発信できることと、発信すべきことは同じではありません。沈黙、保留、削除もまた、言葉を扱う判断の一部です。

情報が多い時代には、何を言わないかが信頼を守ることがあります。十分に確かめていない断言を控える節度も、表現の質を支えます。

10. 深い友情には、精神の質が表れる

Il y a un goût dans la pure amitié où ne peuvent atteindre ceux qui sont nés médiocres.

純粋な友情には、凡庸な心には届かない味わいがある。

出典:『人さまざま』「心について」

この言葉の厳しさは、友情を社交や利害から区別しようとするところにあります。相手を自分の道具にせず、その存在そのものを喜ぶ関係には成熟が要ります。

ここでいう「凡庸」は身分や才能ではなく、関係を損得だけで測る狭さと読めます。友情の深さは、相手の自由や成長をどれだけ尊重できるかに表れます。

友情、贈与、他者との距離

11. 時間は友情を育て、恋の熱を和らげる

Le temps, qui fortifie les amitiés, affaiblit l’amour.

時間は友情を強くし、恋の情熱を弱める。

出典:『人さまざま』「心について」

刺激の強さと関係の強さは別物です。高揚が落ち着いた後にも残る信頼は、日々の小さな応答によってつくられます。

感情が変化することを失敗と決めつける必要はありません。関係の形が変わるとき、熱よりも理解や配慮が中心になることもあります。

12. 大切な人といるだけで満ちる時間がある

Être avec des gens qu’on aime, cela suffit ; rêver, leur parler, ne leur parler point, penser à eux, penser à des choses plus indifférentes, mais auprès d’eux, tout est égal.

愛する人々と共にいる、それだけで十分だ。夢を見ても、話しても、話さなくても、彼らを思っても、別のことを考えても、そばにいればすべて同じである。

出典:『人さまざま』「心について」

親密さは、絶えず会話や娯楽で埋める必要のない安心として現れます。沈黙が気まずくない関係では、互いの存在が背景のように心を支えます。

一緒にいる時間の価値は、出来事の多さだけでは測れません。何もしない時間を共有できることも、信頼の静かな証拠です。

13. 贈る価値は、量より時機にある

La libéralité consiste moins à donner beaucoup qu’à donner à propos.

気前のよさは、多く与えることよりも、ふさわしい時に与えることにある。

出典:『人さまざま』「心について」

援助は規模が大きければよいとは限りません。相手が本当に必要とする瞬間に、負担にならない形で差し出されることが大切です。

善意にも観察が要ります。自分が与えたいものではなく、相手に役立つものを考えることで、贈与は自己満足から思いやりへ変わります。

14. 不親切より、報われない親切を選ぶ

Il vaut mieux s’exposer à l’ingratitude que de manquer aux misérables.

不幸な人を見捨てるより、恩知らずに遭う危険を引き受けるほうがよい。

出典:『人さまざま』「心について」

助けた相手が感謝するかどうかは、こちらには制御できません。それでも困窮を見過ごさないという判断は、相手の反応とは別に価値を持ちます。

もちろん、自分を壊すほど無制限に与える必要はありません。境界を保ちながらも、疑いだけを理由に手を引かない勇気をこの一文は促します。

15. 一人の誠実な友は、すでに大きな恵みである

C’est assez pour soi d’un fidèle ami ; c’est même beaucoup de l’avoir rencontré.

自分のためには、誠実な友が一人いれば十分である。その一人に出会えたこと自体が大きな恵みだ。

出典:『人さまざま』「心について」

人脈の広さと孤独の少なさは一致しません。率直さと安心を交換できる一人の存在が、多数の浅い関係より心を支えることがあります。

信頼は数ではなく、繰り返された約束や配慮の記憶から育ちます。誰かにとっての「誠実な一人」であることも、同じほど大切です。

幸福、期待、欲望との付き合い方

16. 待てる人は、絶望しにくい

Celui qui sait attendre le bien qu’il souhaite, ne prend pas le chemin de se désespérer s’il ne lui arrive pas.

望むよいものを待つことのできる人は、それが訪れなくても絶望への道をたどらない。

出典:『人さまざま』「心について」

期待が強すぎると、結果が遅れるだけで失敗のように感じられます。待つ力は、希望を捨てることではなく、時間を一つの条件として受け入れることです。

目標に向かいながらも、到着時刻まで自分の価値と結びつけない。そうすれば、遅れや迂回があっても選択肢を保てます。

17. 望んだものは、望んだ時には来ない

Les choses les plus souhaitées n’arrivent point, ou, si elles arrivent, ce n’est ni dans le temps ni dans les circonstances où elles auraient fait un extrême plaisir.

最も望んだものは訪れないか、訪れても、最大の喜びをもたらしたはずの時や状況ではやって来ない。

出典:『人さまざま』「心について」

現実は、私たちが頭の中で用意した日程に従いません。願いがかなったとしても、環境や自分自身がすでに変わっていることがあります。

このずれを知ることは悲観ではなく、現在を仮の待合室にしないための知恵です。未来の一条件だけに幸福を預けない視点を与えます。

18. 幸せを待たずに、まず笑う

Il faut rire avant que d’être heureux, de peur de mourir sans avoir ri.

幸福になる前に笑っておかなければならない。笑わないまま死ぬことのないように。

出典:『人さまざま』「心について」

幸福を完成後の報酬にすると、人生はいつまでも準備期間になります。ラ・ブリュイエールは、喜びを未来の条件から少し取り戻そうとします。

笑いは問題を否定することではありません。困難が残っていても、今日の小さな可笑しさや親しさを受け取る余白を守ることです。

19. 喜びとして生きた時間は意外に短い

La vie est courte, si elle ne mérite ce nom que lorsqu’elle est agréable.

人生が楽しい時だけその名に値するのなら、人生は短い。

出典:『人さまざま』「心について」

暦の長さと、生きた実感の濃さは同じではありません。義務や不安だけで日々を埋めると、振り返った時に自分の時間が少なく感じられます。

快楽だけを追う勧めではなく、何に心が動くのかを確かめる問いです。必要な務めの中にも、納得や喜びの瞬間を増やす余地はあります。

20. 欲望を減らすことも豊かさである

S’il est vrai que l’on soit riche de tout ce dont on n’a pas besoin, un homme fort riche c’est un homme qui est sage.

必要としないものの分だけ人は豊かだとすれば、最も豊かな人とは賢い人である。

出典:『人さまざま』「財産について」

豊かさは、持っている量だけでなく、なくても困らない範囲によっても測れます。欲望が際限なく増えれば、所有が増えても不足感は終わりません。

賢さとは欲求を消すことではなく、本当に必要なものを見分けることです。その区別がつけば、他人との比較に奪われる時間も減っていきます。

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