エイブラハム・リンカーン(1809〜1865)は、アメリカ合衆国第16代大統領として、南北戦争と奴隷制をめぐる深い分断に向き合った政治家です。その言葉には、自由や正義を掲げる強さだけでなく、失敗を認め、現実から学び、悲しむ人に寄り添う人間らしさも残されています。
人生の悩みや不安、人間関係の対立、仕事での失敗、考えすぎて行動できないとき。リンカーンの名言は、すべてを楽観的に解決する答えではありません。それでも、変えられない状況のなかで何を選び直せるか、今を大切にするとはどういうことかを考える足場になります。
この記事では、演説、公開書簡、個人宛ての手紙、公式文書から、出典を確認できたリンカーンの名言30選を紹介します。英語原文と自然な日本語訳に加え、現代の生活へ持ち帰れる解説を添えました。心が軽くなる言葉だけでなく、自分らしく生きるために静かに考えたい言葉も含めています。
志を定め、小さく動くリンカーンの名言
1. 尊敬を求めるなら、まず尊敬に値する自分になる
Every man is said to have his peculiar ambition. Whether it be true or not, I can say for one that I have no other so great as that of being truly esteemed of my fellow men, by rendering myself worthy of their esteem. How far I shall succeed in gratifying this ambition, is yet to be developed.
人にはそれぞれ固有の大望があると言われます。それが本当かどうかはさておき、私について言えば、同胞から真に尊敬されるに値する者となり、その尊敬を得ること以上に大きな望みはありません。この望みをどこまでかなえられるかは、これから明らかになるでしょう。
出典:エイブラハム・リンカーン「サンガモン郡民への声明(最初の政治声明)」(1832年3月9日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第1巻、日本語訳は筆者訳)
まだ政治家として無名だったリンカーンは、名声そのものではなく、人から尊敬されるに値する行いを目標に掲げました。評価は他人が決めますが、評価に値する態度を選ぶことは自分にできます。
人の目が気になるときは、評判を直接変えようとするほど疲れてしまいます。今日の仕事や人間関係で「誠実にできること」を一つ選ぶ。そこへ戻るだけでも、考えすぎから少し離れられるかもしれません。
今日の小さな一歩:誰かに認められるためではなく、自分が納得できる行動を一つだけ選んでみてください。
2. 成功を左右するのは、自分で決め直す力である
Always bear in mind that your own resolution to succeed, is more important than any other one thing.
成功しようとする自分自身の決意が、ほかの何よりも重要だということを、いつも心に留めておきなさい。
出典:エイブラハム・リンカーン「アイシャム・リーヴィス宛書簡」(1855年11月5日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
環境や才能を軽視する言葉ではありません。リンカーンが強調したのは、途中で揺れたとしても、自分の意思をもう一度引き受け直せることです。
決意は強い気分ではなく、次の行動として表れます。自分を信じて動くというテーマをさらに読みたい方には、自分らしく生き、行動するエマーソンの名言もつながりの深い記事です。
今日の小さな一歩:止まっている作業を一分だけ開き、最初の一行か一操作だけ進めても十分です。
3. 一度の失敗は、将来の可能性を証明しない
In your temporary failure there is no evidence that you may not yet be a better scholar, and a more successful man in the great struggle of life, than many others, who have entered college more easily.
今回の一時的な失敗は、あなたがやがて、もっと容易に大学へ入った多くの人より優れた学び手となり、人生という大きな闘いでより成功する人になれないという証拠にはなりません。
出典:エイブラハム・リンカーン「ジョージ・C・レイサム宛書簡」(1860年7月22日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第4巻、日本語訳は筆者訳)
大学入学に失敗した若者へ送られた手紙に残る一節で、結果と未来を切り分けています。目の前の結果を、人格や生涯の判決にまで広げないよう静かに諭しています。
認知の歪みとは、一つの失敗から「何をしても駄目だ」と極端な結論を出してしまう心のクセです。結果と将来をいったん分け、「今回はうまくいかなかった」とだけ言い換えると、次の選択肢が見えやすくなります。
4. 今日できることを、明日へ残さない
The leading rule for the lawyer, as for the man of every other calling, is diligence. Leave nothing for to-morrow which can be done to-day.
法律家に限らず、あらゆる職業の人にとって第一の心得は勤勉である。今日できることを明日に残してはならない。
出典:エイブラハム・リンカーン「法律講義のための覚書」(1850年7月1日頃と推定、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
これは大仕事を一日で終えよという意味ではなく、今日扱える部分まで先送りしない姿勢を示しています。先延ばしを破るのは、壮大な計画よりも小さな着手です。
返信を一つ送る、資料名だけ付ける、机の上を一か所整える。完了ではなく着手を今日へ移すと考えると、行動の摩擦は下がります。
今日の小さな一歩:明日に回そうとしていることを一つ選び、最初の一分だけ始めてみてもいいかもしれません。
5. 小さな持ち場で動く人が、大きな肩書だけの人を越える
He who does something at the head of one Regiment, will eclipse him who does nothing at the head of a hundred.
一個連隊の先頭で何かを成す者は、百個連隊の先頭で何もしない者を凌駕する。
出典:エイブラハム・リンカーン「デイヴィッド・ハンター宛書簡」(1861年12月31日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第5巻、日本語訳は筆者訳)
与えられた部隊が小さいと不満を訴えた将軍へ、リンカーンは規模より実行を見よと伝えました。肩書や条件が整うまで待つ人より、今の持ち場で価値を生む人のほうが遠くへ進みます。
個人的には、この言葉の強さは「もっと恵まれたら」という思考を責めることではなく、今ある範囲にも行動の余地が残っていると示す点にあると思います。善進とは、現実を一ミリ善くすること。その一ミリは、小さな持ち場からでも作れます。
学び・理性・仕事に向き合うリンカーンの名言
6. 情熱だけでなく、冷静な理性で未来を支える
Passion has helped us; but can do so no more. It will in future be our enemy. Reason, cold, calculating, unimpassioned reason, must furnish all the materials for our future support and defence.
情熱はこれまで私たちを助けてきた。しかし、もはや同じようには助けてくれない。これからは敵にもなり得る。冷静で、計算し、情念に動かされない理性こそ、将来の支えと防衛に必要なものを与えなければならない。
出典:エイブラハム・リンカーン「青年向け講演(ライシアム演説)」(1838年1月27日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第1巻、日本語訳は筆者訳)
若いリンカーンは、国家を築く段階で役立った熱情が、次の時代には暴走の力にもなると警告しました。感情を否定したのではなく、感情だけに判断を委ねない制度と理性を求めています。
怒りや不安が強いとき、すぐ結論を出さず「分かっている事実」と「自分の解釈」を二行に分ける方法があります。感情が消えなくても、選ぶ行動には少し余白が生まれるでしょう。
7. 人を動かしたいなら、見下さずに説得する
When the conduct of men is designed to be influenced, persuasion, kind, unassuming persuasion, should ever be adopted.
人の行動へ影響を与えようとするなら、説得、それも親切で、偉ぶらない説得を常に用いるべきである。
出典:エイブラハム・リンカーン「禁酒協会での演説」(1842年2月22日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第1巻、日本語訳は筆者訳)
正しいことを伝える場面ほど、人は相手を責めやすくなります。しかし責められた側は、内容よりも防御へ意識を向けがちです。リンカーンは、相手の尊厳を守る伝え方を重視しました。
人間関係で意見がぶつかったときは、「なぜ分からないのか」ではなく「私はこう受け取りました」と主語を自分へ戻す。短い言い換えですが、対話を続ける余地を残せます。
8. 恵まれない出発点は、学ぶ道を閉ざさない
Mr. Clay’s lack of a more perfect early education, however it may be regretted generally, teaches at least one profitable lesson; it teaches that in this country, one can scarcely be so poor, but that, if he will, he can acquire sufficient education to get through the world respectably.
クレイ氏が若い頃に十分な教育を受けられなかったことは惜しまれるが、少なくとも一つ有益な教訓を与えてくれる。この国では、どれほど貧しくても、本人に意思があれば、世の中を立派に生きていくのに足る教育を身につけられるということだ。
出典:エイブラハム・リンカーン「ヘンリー・クレイ追悼演説」(1852年7月6日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
教育機会の不平等が消えると断言した言葉ではありません。それでも、自ら学ぶ道は出発点だけで決まらないという希望を、リンカーンはヘンリー・クレイの生涯から読み取りました。
まとまった時間が取れない日は、一ページ読む、知らない言葉を一つ調べるだけでも学びは続きます。より少なく、しかしより良く。今日理解した一つを残すくらいで十分です。
9. 読書は、解かれた問題と未解決の問題をつなぐ鍵になる
A capacity, and taste, for reading, gives access to whatever has already been discovered by others. It is the key, or one of the keys, to the already solved problems. And not only so. It gives a relish, and facility, for successfully pursuing the [yet] unsolved ones.
読む力と読書への好みは、他の人々がすでに発見したものへ近づく道を開く。それは、すでに解かれた問題へ至る鍵、少なくとも鍵の一つである。それだけではない。まだ解かれていない問題を追究する楽しさと力も与えてくれる。
出典:エイブラハム・リンカーン「ウィスコンシン州農業協会での演説」(1859年9月30日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第3巻、日本語訳は筆者訳)
読書は過去の答えを覚えるためだけではありません。すでに積み上げられた知識を足場にし、自分がまだ知らない問いへ進む力を育てます。
情報が多すぎて疲れた日は、読む量を増やすより、今日の問いを一つ決めるほうが役立つことがあります。「今いちばん知りたいことは何か」を一行書いてから、一つの資料だけ開いてみてください。
10. よい仕事には、心が入り、疲れ方まで変わる
Every man is proud of what he does well; and no man is proud of what he does not do well. With the former, his heart is in his work; and he will do twice as much of it with less fatigue.
人は誰でも、うまくできた仕事を誇りに思い、うまくできなかった仕事を誇りには思わない。前者では心が仕事に入り、より少ない疲れで二倍のことを成し遂げる。
出典:エイブラハム・リンカーン「ウィスコンシン州農業協会での演説」(1859年9月30日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第3巻、日本語訳は筆者訳)
ここでいう誇りは、他人より優れているという感覚ではなく、自分の仕事に手応えを持てる状態です。技量が増すほど、作業の負担が減り、さらに取り組みやすくなる循環が生まれます。
完璧な成果を求めると、練習する前から苦しくなるものです。今日は一工程だけ丁寧に行い、「前回より少し分かった点」を記録してみてもいいかもしれません。
自由・正義・民主主義を考えるリンカーンの名言
11. 同意なしに他者を支配できるほど善い人はいない
No man is good enough to govern another man, without that other’s consent. I say this is the leading principle—the sheet anchor of American republicanism.
相手の同意なしに他者を支配できるほど善い人はいない。私はこれこそ、アメリカ共和主義を支える第一の原則、錨だと言う。
出典:エイブラハム・リンカーン「ピオリア演説」(1854年10月16日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
善意を自称する支配であっても、支配される人の同意を欠けば正当化できない。リンカーンは奴隷制をめぐる議論のなかで、政治の根本をそこへ置きました。
家庭や職場でも、「相手のため」という言葉が相手の選択を奪うことがあります。決める前に一度だけ「本人はどう望んでいるだろう」と問い直すことが、尊重の入口になります。
12. 自由を得た者が、他者の主人になろうとする矛盾
On the question of liberty, as a principle, we are not what we have been. When we were the political slaves of King George, and wanted to be free, we called the maxim that “all men are created equal” a self evident truth; but now when we have grown fat, and have lost all dread of being slaves ourselves, we have become so greedy to be masters that we call the same maxim “a self-evident lie.”
自由という原則について、私たちはかつての私たちではなくなった。ジョージ王の政治的な隷属下にあり、自由を求めていたときには「すべての人は平等に創られた」という原理を自明の真理と呼んだ。ところが豊かになり、自分が奴隷になる恐れを失うと、主人になりたがるあまり、同じ原理を「自明の虚偽」と呼ぶようになった。
出典:エイブラハム・リンカーン「ジョージ・ロバートソン宛書簡」(1855年8月15日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
自分が苦しい立場にいるときは自由を求めながら、力を持つと他者の自由を忘れてしまう。その矛盾を、リンカーンは厳しく見つめました。
正義は、自分に都合のよいときだけ使う基準ではありません。自分と立場の違う人にも同じ原則を当てられるか。答えを急がず、その問いだけを持ち帰る価値があります。
13. 奴隷にも主人にもならないことが、民主主義の核である
As I would not be a slave, so I would not be a master. This expresses my idea of democracy. Whatever differs from this, to the extent of the difference, is no democracy.
私が奴隷になりたくないのと同じように、主人にもなりたくない。これが私の民主主義の考えを表している。ここから異なるものは、その異なる分だけ民主主義ではない。
出典:エイブラハム・リンカーン「民主主義の定義についての断片」(1858年8月1日頃と推定、日付は校訂者による推定、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
私はこの断片を、自由を求めるだけでなく、他者を支配する側へ回らない覚悟まで含む言葉として受け止めています。短い文章のなかへ、相互の尊厳を基礎とする民主主義を凝縮した表現ではないでしょうか。
この文書の日付は、校訂者による推定で、特定の演説や機会とは結びついていません。その不確実性を残したままでも、リンカーン本人の筆跡による断片として確認できる言葉です。
14. 他者の自由を否定する者は、自分の自由も保てない
This is a world of compensations; and he who would be no slave, must consent to have no slave. Those who deny freedom to others, deserve it not for themselves; and, under a just God, can not long retain it.
この世界には釣り合いがある。奴隷になりたくない者は、奴隷を持たないことにも同意しなければならない。他者の自由を否定する者は、自ら自由を得るに値せず、正しい神のもとでは、それを長く保つこともできない。
出典:エイブラハム・リンカーン「ヘンリー・L・ピアースほか宛書簡」(1859年4月6日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第3巻、日本語訳は筆者訳)
自由を自分だけの特権にすると、その原則は内側から崩れます。リンカーンは、自由には相互性が必要だと述べました。
個人の良心と社会の制度を結びつけて考える文章です。自由と良心をめぐる別の視点として、ソローの自由・自然・市民的不服従に関する名言も参考になります。
15. 同じ「自由」という言葉でも、意味は正反対になり得る
The world has never had a good definition of the word liberty, and the American people, just now, are much in want of one. We all declare for liberty; but in using the same word we do not all mean the same thing.
世界はいまだ「自由」という言葉のよい定義を持ったことがなく、今まさにアメリカ国民はそれを強く必要としている。私たちは皆、自由を掲げるが、同じ言葉を使っていても、同じことを意味してはいない。
出典:エイブラハム・リンカーン「ボルティモア衛生博覧会での演説」(1864年4月18日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第7巻、日本語訳は筆者訳)
リンカーンは続けて、自分の労働の成果を自分で扱える自由と、他人やその労働を意のままにする「自由」が、同じ名で呼ばれる矛盾を説明しました。
議論がかみ合わないときは、意見以前に言葉の定義が違う場合があります。「自由」「公平」「責任」といった抽象語を一度具体例へ置き換えると、争点が静かに見えてくるかもしれません。
逆境と変化を越えるリンカーンの名言
16. 分断を抱えたままでは、共同体は長く立ち続けられない
A house divided against itself cannot stand. I believe this government cannot endure, permanently half slave and half free. I do not expect the Union to be dissolved—I do not expect the house to fall—but I do expect it will cease to be divided.
内部で分裂した家は立ち続けることができない。この政府が、半分は奴隷州、半分は自由州のまま永続できるとは思わない。連邦が解体するとも、家が倒れるとも予想していないが、分裂した状態は終わると考えている。
出典:エイブラハム・リンカーン「「分裂した家」演説」(1858年6月16日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第2巻、日本語訳は筆者訳)
この言葉は、対立があるだけで共同体が直ちに崩壊するという予言ではありません。奴隷制をめぐる根本矛盾を、曖昧なまま永久に維持することはできないという診断でした。
自分のなかにも、「変わりたい」と「失敗したくない」が同居することがあります。両方を責めず、今日はどちらの価値を行動で一ミリ優先するかを決める。それが分断を小さくする一歩になります。
17. 大きな任務を前に、不安と助けの必要を認める
I now leave, not knowing when, or whether ever, I may return, with a task before me greater than that which rested upon Washington. Without the assistance of that Divine Being, who ever attended him, I cannot succeed. With that assistance, I cannot fail.
私は今、いつ戻れるのか、再び戻れるのかも分からないまま、ワシントンが担ったものより大きな任務を前にして、この地を離れる。彼を常に見守った神の助けなしには、私は成功できない。その助けがあれば、失敗することはない。
出典:エイブラハム・リンカーン「スプリングフィールド告別演説」(1861年2月11日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第4巻、日本語訳は筆者訳)
大統領就任へ向かう出発の日、リンカーンは自信だけを演出しませんでした。任務の重さ、自分の限界、支えを必要とすることを率直に語っています。
強さは、何でも一人で抱えることとは限りません。頼れる人を一人思い浮かべ、必要なことを一文だけ伝える。それも困難へ向かう立派な行動です。
今日の小さな一歩:抱えていることを「相談したい」「少し手を貸してほしい」と一文にしてみてください。
18. 誤りが示されたら直し、真実が見えたら考えを更新する
I shall try to correct errors when shown to be errors; and I shall adopt new views so fast as they shall appear to be true views.
誤りが誤りだと示されたなら、私はそれを正そうと努める。そして新しい見方が真実だと分かりしだい、その見方を取り入れる。
出典:エイブラハム・リンカーン「ホレス・グリーリー宛公開書簡」(1862年8月22日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第5巻、日本語訳は筆者訳)
考えを変えることを、意志の弱さではなく誠実さとして示した言葉です。重要なのは、批判のたびに揺れることではなく、事実と目的に照らして誤りを修正する姿勢でしょう。
認知的再評価とは、出来事の意味づけを見直すことです。以前の判断に固執せず、「今ある情報なら、どう考え直すか」と問い直すと、後悔を学びへ変えやすくなります。
19. 新しい危機には、新しく考え、新しく動く
The occasion is piled high with difficulty, and we must rise with the occasion. As our case is new, so we must think anew, and act anew. We must disenthrall ourselves, and then we shall save our country.
状況は困難を高く積み上げており、私たちはその状況に応じて立ち上がらなければならない。事態が新しい以上、私たちも新しく考え、新しく行動しなければならない。自らを古い束縛から解き放ってこそ、国を救える。
出典:エイブラハム・リンカーン「第2次年次教書」(1862年12月1日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第5巻、日本語訳は筆者訳)
過去に通用した考えが、変化した状況でも正しいとは限りません。リンカーンは南北戦争と奴隷制という危機を前に、従来の前提そのものを外す必要を訴えました。
仕事の進め方が行き詰まったとき、努力量だけを増やすより、前提を一つ疑うほうが役立つ場合があります。「本当に全部必要か」「一番小さく試せる形は何か」と書くだけでも、新しい行動の入口になります。
20. 出来事を完全には支配できなくても、応答は選び直せる
I claim not to have controlled events, but confess plainly that events have controlled me.
私は出来事を支配したとは主張しない。むしろ、出来事が私を動かしてきたと率直に認める。
出典:エイブラハム・リンカーン「アルバート・G・ホッジズ宛書簡」(1864年4月4日、『Collected Works of Abraham Lincoln』第7巻、日本語訳は筆者訳)
大統領として大きな決定を重ねた人物が、すべてを計画どおり動かしたとは言わなかった。その率直さに、この言葉の重みがあります。現実は人を変え、当初の考えを修正させることがあります。
私はこの言葉を、受け身になる勧めではなく、現実から学び続ける謙虚さとして読みたいです。ストア派の「コントロールの二分法」が示すように、変えられない出来事と、今選べる応答を分けると、次の一手へ戻りやすくなります。

