失敗と再挑戦
21. 長く離れていても、再び始められる
Nine years have passed since I laid aside the work of editing magazines.
雑誌編集の手を洗ってから、ここに年を経ること九年になる。
出典:尾崎紅葉『硯友社の沿革』・九年後の回顧(現代語表記・英訳:当サイト)
紅葉は、編集活動から長く離れていた時間を隠しません。中断期間は、再挑戦の資格を失う期間ではなく、次に何をするかを考え直す時間にもなります。
止めていたことがあるなら、以前の量へ戻そうとせず、十分の一の規模で再開してください。復帰の基準は過去の最盛期ではなく、今日の現実です。
22. 再挑戦は、計画として口にする
I have a plan to lead my forces back into the world of magazines next spring.
来春にもなったら、また手勢を率いて雑誌界に打って出ようという計画もある。
出典:尾崎紅葉『硯友社の沿革』・再挑戦の構想(現代語表記・英訳:当サイト)
紅葉は「いつか」ではなく「来春」と時期を示し、再挑戦を計画として語りました。期限は、願望を行動へ近づける境界線です。
期限のある計画は、願望より行動へ近づきます。日付が決まると、準備に必要な順序や、今はしなくてよいことも見えやすくなります。
23. 未完を、そのまま終わらせない
Having reached the ninth stage without a tenth feels incomplete; I want to create the tenth.
第九期まであって十期のないのは勘定が悪いから、ぜひ第十期を作りたい。
出典:尾崎紅葉『硯友社の沿革』・再挑戦の構想(現代語表記・英訳:当サイト)
区切りの悪さへのこだわりが、再開の動機になっています。動機は必ずしも壮大である必要はありません。「ここまで来たのだから、もう一つ」が次の仕事を生むことがあります。
再開の動機は、必ずしも壮大である必要はありません。区切りを良くしたいという素朴な気持ちでも、次の一回を生み出す力になります。
24. 組織も人も、大きく変わっていく
The changes in Kenyusha and its members over those nine years were immense.
この九年間の硯友社および社中の変遷は、実におびただしい。
出典:尾崎紅葉『硯友社の沿革』・九年後の回顧(現代語表記・英訳:当サイト)
長い時間の中で、仲間の職業、距離、立場、活動は変わります。組織を固定された形で守ろうとするより、変化を記録し、現在に合う関わり方を探す方が現実的です。
長期の活動では、人、時間、目的が変わるのが自然です。過去の形を守ることより、現在の条件に合う形へ更新する方が、活動の本質を残せます。
25. 成功も失敗も、物語の材料になる
There were successes and failures, anger and joy, sorrow and delight—enough to make a fine novel.
成功あり、失敗あり、喜怒あり哀楽ありで、一部の好小説ができる。
出典:尾崎紅葉『硯友社の沿革』・九年後の回顧(現代語表記・英訳:当サイト)
紅葉は、成功だけを歴史の中心に置きません。失敗や感情の揺れも含めて見れば、経験は一つの豊かな物語になります。人生を評価するとき、結果だけに絞ると多くの意味がこぼれます。
経験は、成功か失敗かの二択では捉えきれません。感情の揺れや関係の変化まで含めると、出来事は次の判断を支える材料になります。
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尾崎紅葉の作品と明治文学をさらに読む
『金色夜叉』の本文、尾崎紅葉の作品集、硯友社や明治文学の解説書を読み比べると、今回の言葉が生まれた時代と創作環境を深く理解できます。
まとめ
尾崎紅葉の言葉から見えてくるのは、文学は一人の才能だけで生まれるのではなく、記録、対話、紹介、場づくり、失敗、再挑戦の積み重ねから育つということです。自分の記憶を疑い、事実を集め、仲間を見つけ、止まった活動にも再び期限を与える。こうした小さな実践が、後に大きな文化を形づくりました。
完璧な準備を待つ必要はありません。今日できる最小の一歩は、残したい出来事を一行記録することです。その一行が、次の対話や創作の導火線になります。