レイモンド・カーヴァーの名言3選|試みを続け、自分の変化を受け入れる

創作をイメージした白黒のタイプライター

執筆・編集:meigen89

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レイモンド・カーヴァーの言葉を読むとき、短い一文だけでは見えないものがあります。誰に向けて、どのような場面で語られたのか。その背景を知ると、励ましの言葉としてだけでなく、一人の書き手が経験を振り返る言葉として受け取れます。

ここでは、本人のインタビューと書簡から3つを選び、英語原文・当サイト訳・発言の背景を示します。各節の「今日の実践」は、その言葉から考えたmeigen89の提案であり、本人が述べた教えではありません。

1.原稿が戻ってきても、試みは残る

The piece came back, finally, but that was fine.

原稿は結局戻ってきたが、それでよかった。(当サイト訳)

レイモンド・カーヴァー「The Art of Fiction No. 76」『The Paris Review』第88号、1983年夏。インタビュー原文

少年時代、カーヴァーは母親と原稿をタイプし、雑誌へ送りました。この言葉は、その原稿が返ってきた経験を振り返ったものです。掲載という結果は得られなくても、原稿を外へ送り出した経験まで失われたわけではありません。

ここから考えたいのは、挑戦を評価するときに何を数えるかです。採用・不採用だけで区切れば、残るのは結果だけになります。しかし、書き上げること、誰かに見せること、返答を受け取ることも、それぞれ別の経験です。

今日の実践:止まっている原稿があれば、一段落だけ整えて読み返してみてください。そのあと、誰に、どの形で読んでもらうかを一つ決めます。公開前の確認が必要な内容なら、まず信頼できる相手に見てもらう段階でも十分です。

2.過去の努力を、なかったことにしない

But we did the best we could.

それでも、私たちはできる限りのことをした。(当サイト訳)

レイモンド・カーヴァー「The Art of Fiction No. 76」『The Paris Review』第88号、1983年夏。インタビュー原文

若くして結婚し、家庭を担った時期を振り返る一節です。慣れない役割への戸惑いを語ったあとに置かれており、何でも正当化するための格言ではありません。

失敗を振り返るときは、「足りなかったこと」と「それでも行ったこと」を両方書けます。前者は修正の材料に、後者は過去の自分を一面的に決めつけないための材料になります。どちらかを消す必要はありません。

今日の実践:気になっている出来事について、「直せる点」と「当時したこと」を一つずつ書きます。謝罪や修正が必要なら、それは具体的な行動として別に決めてください。自分を責め続けることを、行動の代わりにしないための整理です。

3.以前と同じ自分でなくてもよい

I’m not the same writer I used to be.

私は、以前と同じ作家ではない。(当サイト訳)

レイモンド・カーヴァー、ゴードン・リッシュ宛書簡、1982年8月11日。「Letters to an Editor」『The New Yorker』2007年12月17日掲載。書簡原文

編集者に、新しい短編集の作風の変化を説明した言葉です。編集を拒絶するという話ではなく、自分の表現が変わってきたことを伝えています。

仕事や創作では、以前うまくいった方法を大切にしながら、今の目的に合う方法へ変える場面があります。そのとき、「前と違う」という事実だけで変更を悪いことにする必要はありません。

ただし、変えること自体が目的にならないように、残したいものを先に決めると判断しやすくなります。たとえば文章なら、出典への誠実さは保ちつつ、見出しや構成、説明の長さを変えるという選択ができます。

今日の実践:見直したい習慣や仕事を一つ選び、「守るもの」と「変えてよいもの」を一つずつ書いてみてください。変えてよいものの中から、小さく試せる一箇所を選びます。

名言を、自分の言葉と混同しないために

短い引用を日常に生かすときは、本人の発言と、そこから自分が考えたことを分けておくと読み方が明確になります。本記事で選んだ言葉も、原稿の返送、若いころの生活、編集者との対話という具体的な場面の言葉です。

まず背景を読み、そのうえで今の自分に使える問いを一つ持ち帰る。名言をたくさん覚えることより、今日の一つの判断に役立てる読み方を提案します。

あわせて読みたい名言

創作への姿勢を別の作家の言葉から考えたい方は、ヘミングウェイの名言集やスタインベックの名言集へ。失敗を振り返る際は、セルフ・コンパッションの考え方も参考になります。

アイキャッチ:創作のイメージ写真。Photo by Katrin Hauf on Unsplash。

出典・参考資料

  • Raymond Carver, “The Art of Fiction No. 76.” Interviewed by Mona Simpson and Lewis Buzbee. The Paris Review, Issue 88, Summer 1983.
  • Raymond Carver, “Letters to an Editor.” The New Yorker, December 17, 2007. 本記事で使用した書簡は1982年8月11日付。