本居宣長の名言30選|学問・継続・読書・古典を深める言葉

執筆・編集:meigen89

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本居宣長(1730〜1801)は、古典の言葉と心を丹念に読み解いた江戸時代後期の国学者です。この記事では、学びの心得をまとめた『うひ山ぶみ』と、晩年の随筆『玉勝間』から、出典を確認できる30の言葉を選びました。

宣長の思想には18世紀の社会や国学固有の前提が含まれます。本記事はその全体を現代の正解として扱うのではなく、継続、読書、基礎、再検討といった学問の方法に関する箇所を中心に読みます。

日本思想を別の角度から考えるには、西田幾多郎の名言も参考になります。また、古典と美の関係については、岡倉天心の名言世阿弥の名言にも通じる論点があります。

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自分に合う学びの道を選ぶ

1. 学び方は一つではない

There are many paths of learning in the world; they are not all of one kind.

世に物まなびのすぢ、しなじな有て、一トやうならず。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論(寛政10年・1798年)。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

宣長は、学問には複数の領域と方法があるところから話を始めます。唯一の正解となる勉強法を探すより、目的と対象に応じて方法が変わると理解することが出発点です。

新しい分野を始めるときは、まず「何を知りたいのか」を一文で書いてみてください。方法を決める前に目的を明らかにすると、不要な教材を減らせます。

2. 師と学ぶ人によって方法は変わる

People learn according to the path they prefer, and the method varies with the mind of each teacher and each learner.

おのおの好むすぢによりてまなぶに、又おのおのその学びやうの法も、教ふる師の心々、まなぶ人の心々にて、さまざまあり。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

同じ教材でも、教える人と学ぶ人の経験、関心、理解の速度によって有効な進め方は変わります。評判の良い方法が自分に合わないからといって、学ぶ能力がないとは限りません。

方法の相性を見極めるには、教材を一週間だけ試し、「理解できたこと」と「続けにくかった点」を記録するのが現実的です。

3. 自分が自然に向かう方向を大切にする

In most cases, one should follow the direction toward which one naturally inclines.

大抵みづから思ひよれる方にまかすべき也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

宣長は、初心者であっても、関心の向かう方向はある程度自分で分かると考えました。外から決められた順序だけでなく、好奇心を学びの入口として認めています。

ただし、好きなことだけを選べば十分という意味ではありません。関心を入口にし、その後で不足する基礎へ戻る往復が、長く学ぶうえで役立ちます。

4. 不得意だけで学びを組み立てない

If one works at what one neither likes nor is suited to, the same effort often yields little result.

好まぬ事得ぬ事をしては、同じやうにつとめても、功を得ることすくなし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

努力量が同じでも、関心や適性によって吸収の度合いは変わります。これは苦手を避け続ける勧めではなく、得意な入口を使って学習を前進させる発想です。

苦手分野を始める前に、得意な形式へ変換してみてください。文章が重ければ図解にする、暗記が苦手なら具体例に結びつける、といった小さな工夫ができます。

5. 同じ努力でも進み方で結果は変わる

Even when the same energy is spent, the path and manner of learning will bring different gains and losses.

同じく精力を用ひながらも、そのすぢそのまなびやうによりて、得失あるべきこと也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

努力そのものだけでなく、対象の選択、教材の難易度、復習の間隔なども成果を左右します。頑張りが足りないと決めつける前に、学習設計を点検する余地があります。

一週間進まなかった教材は、時間を増やす前に「難しすぎないか」「目的に直結しているか」「復習できているか」の三点を確認するとよいでしょう。

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本居宣長の学び方を原典で読む

『うひ山ぶみ』は、初心者が何をどう学ぶかを宣長自身が整理した入門書です。本文と現代語訳を行き来すると、継続や再読についての考えをより深く理解できます。

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継続し、思いくずおれない

6. 学問の要は長く怠らず続けること

In the end, what matters in learning is to continue diligently over many years without weariness or neglect; the exact method is of lesser importance.

詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦ずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びやうは、いかやうにてもよかるべく、さのみかかはるまじきこと也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

宣長が最も重く見たのは、洗練された方法より継続です。方法の比較に時間を使い続け、実際の読書や検討が止まるなら、本末が逆転します。

今日の学びを一分に縮めても構いません。教材を開き、一段落だけ読むことを継続の最低線にすると、完全に途切れる日を減らせます。

7. 良い方法も実行しなければ働かない

However good the method of study may be, it bears no fruit if one neglects to practice it.

いかほど学びかたよくても、怠りてつとめざれば、功はなし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

優れた計画や教材は、実行されたときに初めて価値を持ちます。学習法を集めることが、学習そのものの代わりになっていないかを問う言葉です。

次の教材を探す前に、手元の教材を五分だけ進めてください。選択より実行を先に置くと、迷いが小さくなります。

8. 才能が乏しくても積み重ねには成果がある

Even a person of little talent will gain a measure of achievement by working without neglect.

不才なる人といへども、おこたらずつとめだにすれば、それだけの功は有る物也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

宣長は生まれつきの才の差を認めながらも、それを学ばない理由にはしませんでした。能力を誇張せず、努力で得られる範囲を着実に広げる現実的な考え方です。

他人の速さではなく、昨日の自分との差を記録してください。一行理解した、一語調べたという進歩も、積み重なれば知識の土台になります。

9. 遅く始めても思いのほか進める

Those who begin learning late may achieve more than expected if they apply themselves.

晩学の人もつとめはげめば思ひの外功をなすことあり。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

開始年齢を理由に諦める必要はない、と宣長は述べます。遅く始めた人には、目的意識や生活経験を理解に結びつけられる利点もあります。

始めるのが遅かったという評価は変えられませんが、今日一ページ読むことは選べます。過去ではなく、次の一回へ注意を戻す言葉として読めます。

10. 時間の少なさが集中を生むこともある

A busy person may unexpectedly accomplish more than someone with abundant leisure.

暇のなき人も、思ひの外、いとま多き人よりも功をなすもの也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

自由時間の量と成果は単純には比例しません。限られた時間だからこそ、読む範囲と目的を絞り、集中して取り組める場合があります。

まとまった時間を待たず、移動前の十分、就寝前の五分など、すでに存在する短い隙間を一つ学習時間に決めてみてください。

11. 才能・年齢・忙しさで心を折らない

Do not lose heart and stop because talent is scarce, learning began late, or time is limited.

才のともしきや、学ぶことの晩きや、暇のなきやによりて、思ひくづをれて止ることなかれ。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

ここで戒められているのは、条件の不利そのものより、それを理由に学びを完全に止めることです。制約を認めたうえで、可能な規模に縮めて続ける姿勢が示されています。

予定が崩れた日は、通常の目標を十分の一にする復帰ルールを使えます。三十分の予定なら三分だけ行い、翌日に戻します。

12. 方法が不完全でも努めれば前へ進める

Understand that, one way or another, progress becomes possible if you keep applying yourself.

とてもかくてもつとめだにすれば出来るものと心得べし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

完璧な準備を待たず、今ある条件で始めることを促す一節です。学びながら方法を調整する方が、頭の中だけで最適解を探すより具体的な情報を得られます。

迷っている教材を一つだけ選び、今日の終了条件を「一節読む」と決めてください。小さく始めることで、次の判断材料が生まれます。

13. 学びでは失望して投げ出すことを避ける

In learning, becoming discouraged and giving up is something greatly to be avoided.

すべて思ひくずをるるは、学問に大にきらふ事ぞかし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

理解できない時期は、学習の失敗ではなく、まだ材料が結びついていない段階かもしれません。宣長は、感情的な落胆から学び全体を捨てることを強く戒めます。

分からない箇所には印だけ付け、そこで止まらず次へ進む方法があります。理解を保留することと、諦めることは別です。

読み返しながら理解を育てる

14. 大部の本は後に回し、短い本から始めてもよい

It is reasonable to postpone voluminous works for a time and begin with shorter books.

巻数多き大部の書共はしばらく後へまはして、短き書どもより先ず見んも宣しかるべし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

重要な本ほど最初から完読しなければならない、とは限りません。初心者が取りつきやすい短い資料で語彙と背景を得てから大著へ進む方が、理解しやすいことがあります。

読みたい大著が止まっているなら、同じテーマの短い入門書や一章だけを先に読み、入口を作ってください。

15. 読む順序を固定しすぎない

There is no need always to fix a strict order of reading; follow opportunity and look into one work and another.

かならずしも次第を定めてよむにも及ばず。ただ便にまかせて、次第にかかはらず、これをもかれをも見るべし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

体系的な順序には利点がありますが、順番を守れないことが停止の原因になるなら柔軟さが必要です。手に入る資料、関心が湧いた章、理解しやすい箇所から進んでもよいという考えです。

順番どおりに進めない罪悪感が強いと、読む行為そのものが止まりやすくなります。柔軟な順序は、継続を守るための選択肢です。

16. 初めから細部をすべて解こうとしない

At the beginning, one should not try to resolve every meaning from the first line onward.

初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

未知の語を一つずつ完全に調べる読み方は、正確でも全体像を失いやすくなります。まず文書全体の論点や構造をつかみ、必要な箇所へ戻る段階的な読解が勧められています。

最初の一周は、分からない語を三つまでに限定して調べ、全体を通すことを優先してみてください。

17. 一冊に固まらず、行き来しながら読む

First read through broadly, move to other books, and after reading this and that, return to the earlier work and read it many times.

まづ大抵にさらさらと見て他の書にうつり、これやかれやと読ては、またさきによみたる書へ立かへりつつ、幾遍もよむべし。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

一冊を完全に理解してから次へ進むのではなく、複数の資料を往復する読み方です。別の本で得た知識が、以前は見えなかった意味を照らすことがあります。

同じテーマについて、入門書、原典、解説書の三種類を少しずつ往復すると、立体的に理解しやすくなります。

18. 繰り返すうちに分からなかったことが見えてくる

As one reads repeatedly, what was not understood at first gradually becomes intelligible.

幾遍もよむうちには、始めに聞えざりし事も、そろそろと聞ゆるやうになりゆくもの也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

理解は一回の読書で完成するものではありません。再読のたびに語彙、背景知識、前後関係が増え、同じ文章から受け取れる情報が変わります。

難しい本には読了日だけでなく、再読予定日も記録しておくとよいでしょう。一か月後に同じ一節を読むだけでも変化を確認できます。

19. 読むべき本と学び方は読書の中から見えてくる

Through repeated reading, one gradually develops one’s own judgment about other books to read and ways of learning.

数遍よむ間には、其外のよむべき書どものことも、学びやうの法なども、段々に自分の料簡の出来るものなり。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

最初から完全な読書計画を作る必要はありません。実際に読むことで疑問が生まれ、次に必要な本や方法が具体化していきます。

計画は固定表ではなく、読書後に更新する仮説として扱うと、調査の進展に合わせて柔軟に変えられます。

20. 注釈を作ると理解が深まる

Making annotations on a work is of great benefit to learning.

物の注釈をするは、すべて大に学問のためになること也。

出典:本居宣長『うひ山ぶみ』総論。表記は本居宣長記念館掲載本文を基に、句読点と一部の字体を読みやすく整えた

注釈を作るには、語句の意味、文脈、根拠、異説を確認しなければなりません。受け身で読むより、自分の言葉で説明する方が理解の曖昧さを発見できます。

今日読んだ一節に、三行だけ注釈を付けてください。「要点」「根拠」「疑問」の三項目で十分です。

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