21. 争いの奥にも、歪んだ平和への欲求がある
Every man seeks peace by waging war, but no man seeks war by making peace.
人は戦争によって平和を求めることはあっても、平和をつくるために戦争そのものを求めることはありません。
出典:アウグスティヌス『神の国』第19巻第12章(日本語訳は筆者訳)
人間関係の衝突でも、相手を倒したい気持ちの奥に、自分が安心できる状態を取り戻したい欲求が隠れていることがあります。
怒りが強いときは、「私は何を守ろうとしているか」を考えてみてください。目的が分かれば、争い以外の手段を選べる可能性が生まれます。
22. 心の平和は、知識と行動の調和にある
The peace of the rational soul is the harmony of knowledge and action.
理性的な魂の平和とは、知っていることと行うことの調和です。
出典:アウグスティヌス『神の国』第19巻第13章(日本語訳は筆者訳)
正しいと分かっていることと、実際の行動が離れるほど、内側の葛藤は大きくなります。完璧でなくても、価値観に沿う小さな行動は心を整えます。
今日すべきことを一つだけ実行してみてください。知識を一ミリ行動へ移すことが、善進になります。
23. 人と人の平和は、秩序ある一致である
Peace between man and man is well-ordered concord.
人と人との平和とは、秩序のある一致です。
出典:アウグスティヌス『神の国』第19巻第13章(日本語訳は筆者訳)
平和は、全員が同じ意見になることではありません。違いを残したまま、境界、役割、約束を整えることでも成立します。
曖昧な関係で疲れているなら、期待を一つ言葉にしてみてください。伝えるべきことを穏やかに明確にするのも、関係を守る方法です。
24. 平和とは、秩序の静けさである
The peace of all things is the tranquillity of order.
あらゆるものの平和とは、秩序の静けさです。
出典:アウグスティヌス『神の国』第19巻第13章(日本語訳は筆者訳)
心を落ち着かせようとしても、机、予定、睡眠、連絡事項が乱れていれば、静けさは戻りにくいものです。内面と環境は切り離せません。
まず目の前の物を一つだけ元の場所へ戻してみてください。小さな秩序が、心にも静かな余白を作ります。
幸福・自由・愛の秩序を考えるアウグスティヌスの名言
25. 最高の善は、平和の中の生である
The end or supreme good of this city is either peace in eternal life, or eternal life in peace.
この国の目的、すなわち最高の善は、永遠の生における平和、または平和のうちにある永遠の生です。
出典:アウグスティヌス『神の国』第19巻第11章(日本語訳は筆者訳)
何を最終目的に置くかで、途中の選択は変わります。勝利や所有だけを目的にすると、得た後にも落ち着けないことがあります。
今日の判断が、長く続く平和につながるかを一度考えてみてください。短い快楽より、後で自分を責めずに済む選択を優先する見方もできます。
26. 善い人は束縛の中でも自由であり、悪い人は権力の中でも奴隷である
The good man, though a slave, is free; the wicked, though he reigns, is a slave.
善い人は、奴隷であっても自由です。悪い人は、支配者であっても奴隷です。
出典:アウグスティヌス『神の国』第4巻第3章(日本語訳は筆者訳)
自由は、外から何でもできる状態だけではありません。欲望や怒りに支配されず、自分が善いと判断した行動を選べることも自由です。
変えられない状況ではなく、今選べる態度を一つ探してみてください。外の制約があっても、判断の全てまで奪われるわけではありません。
27. 幸福を望むことは、善いものへ向かうこと
Following after God is the desire of happiness; to reach God is happiness itself.
神に従おうとすることは幸福を望むことであり、神に至ることは幸福そのものです。
出典:アウグスティヌス『カトリック教会の道徳』第11章(日本語訳は筆者訳)
幸福は、快適さを増やすことだけではなく、自分が最高の善だと考えるものへ近づく過程でもあります。方向が定まると、苦労にも意味が生まれます。
自分が「善い人生」と呼びたい状態を一文で書いてみてください。その方向へ近づく一分の行動を選べば、今日の時間が変わります。
28. 徳とは、完全な愛のかたちである
Virtue is nothing else than perfect love.
徳とは、完全な愛にほかなりません。
出典:アウグスティヌス『カトリック教会の道徳』第15章(日本語訳は筆者訳)
節制、勇気、正義、賢慮を、冷たい規則ではなく愛の形として捉えるのがアウグスティヌスの特徴です。守りたいものが明確なら、我慢や勇気の意味も変わります。
難しい行動の前で、「これは何を大切にするためか」と問い直してみてください。愛する対象が見えると、努力が罰ではなく選択になります。
29. 正しく生きるとは、愛するものの順序を整えること
He is a man of just and holy life who forms an unprejudiced estimate of things, and keeps his affections under strict control.
物事を偏りなく見積もり、愛情を正しく整える人こそ、正しく聖なる生を送る人です。
出典:アウグスティヌス『キリスト教教理』第1巻第27章(日本語訳は筆者訳)
問題は愛すること自体ではなく、何をどの程度大切にするかです。仕事を大切にするあまり健康を壊すなど、順序が崩れると善いもの同士でも衝突します。
予定を一つ減らし、本当に守りたいものへ時間を戻してみてください。「より少なく、しかしより良く」は、愛の順序を整える実践です。
30. 学びの終わりは、愛へつながっている
The fulfillment and the end of all Holy Scripture is love.
聖書全体の成就と目的は、愛です。
出典:アウグスティヌス『キリスト教教理』第1巻第35章(日本語訳は筆者訳)
知識は増えるだけでは十分ではなく、他者や自分をどう扱うかへ結びついて初めて意味を持ちます。正しさを示すための知識が、人を傷つけることもあります。
今日学んだことを、誰かを少し助ける形へ変えてみてください。一文を共有する、分かりやすく説明する。その小さな変換が知識を生きたものにします。
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まとめ|愛の向きを確かめ、今を生きる
アウグスティヌスの言葉は、心の不安、習慣の力、記憶、時間、平和、幸福を別々の問題としてではなく、何を愛し、どこへ向かって生きるかという一つの問いへ結びつけます。
過去を消したり、将来の不安を完全になくしたりすることはできません。それでも、今この瞬間に何へ注意を向け、どの行動を選ぶかは見直せます。迷った日は、30の言葉から一つだけ選び、その言葉を一行書き写すだけでも十分です。
大きな答えより、今日の愛の向きを整える小さな一歩。その静かな選び直しが、人生の時間を少しずつ変えていくのかもしれません。
出典・参考文献
参考:アウグスティヌス『告白』(E.B. Pusey英訳、Project Gutenberg公開版)、『神の国』『キリスト教教理』『カトリック教会の道徳』(New Advent公開英訳)。日本語訳は記事執筆者による訳です。