21. 専制は信頼なしでも動くが、自由は信頼を必要とする
Despotism may govern without faith, but liberty cannot.
専制は信頼がなくても統治できる。しかし、自由はそうではない。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』第1巻「民主共和国を維持する主要な原因」(日本語訳は筆者訳)
自由な社会では、人々が互いに最低限の約束や制度を信頼し、自分の責任で行動する必要があります。恐怖で従わせる専制と違い、自由は市民の内側にある支えを求めます。
信頼は大きな宣言より、小さな約束を守ることで育ちます。今日は決めたことを一つだけ実行する。それが自由を支える身近な土台です。
革命・中央集権・歴史を考えるトクヴィルの名言
22. 革命の始まりには、結果を見通せない期待が集まる
Everywhere an indistinct conception arose amongst the nations that a new period was at hand, and vague hopes were excited of great changes and reforms; but no one as yet had any suspicion of what the Revolution was really to become.
新しい時代が近づいているという曖昧な感覚が各国に広がり、大きな変化と改革への漠然とした期待が高まった。しかし、革命が実際に何になるのかを、まだ誰も予想していなかった。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『旧体制と大革命』第1編第1章(日本語訳は筆者訳)
大きな変化の前には、期待が先に膨らみ、具体的な結果は見えにくいものです。善い目的があっても、過程で何が起こるかは別に検討しなければなりません。
何かを全面的に変えたくなったら、まず小さな試行を一つ行ってください。小さくラフに始めれば、予想外の影響を見ながら修正できます。
23. 革命は、壊したはずの中央集権を強めることがある
The democratic Revolution which destroyed so many of the institutions of the French monarchy, served therefore to consolidate the centralised administration, and centralisation seemed so naturally to find its place in the society which the Revolution had formed that it might easily be taken for its offspring.
フランス王政の多くの制度を破壊した民主革命は、結果として中央集権的な行政を強固にした。中央集権は革命後の社会へあまりに自然に収まり、革命が生み出したものと思われるほどだった。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『旧体制と大革命』第2編第5章(日本語訳は筆者訳)
革命が古い支配を壊しても、その下で育っていた管理の仕組みを引き継ぐことがあります。看板が変わっても、権力の流れが同じなら、結果は期待と異なります。
問題を直すときは、表面の名称だけでなく、誰が決め、誰が確認するのかを見てください。構造を一つ書き出すと、変えたつもりの部分が見えてきます。
24. 国民が主権者でも、個人が従属する矛盾は起こり得る
The nation as a whole had all the rights of sovereignty; each citizen taken singly was thrust into the strictest dependence; the former was expected to display the experience and the virtues of a free people–the latter the qualities of a faithful servant.
国民全体は主権のあらゆる権利を持っていたが、市民一人ひとりは最も厳しい従属へ押し込まれた。国民には自由な人民の経験と徳が求められ、個人には忠実な僕の資質が求められた。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『旧体制と大革命』第3編第15章(日本語訳は筆者訳)
集団として主権を持つことと、一人ひとりが日常で選べることは同じではありません。国家の名では自由でも、行政の細部で個人がすべて指示される矛盾が生まれます。
自分の仕事でも、結果だけ任されて手段は全く選べない状態になっていないか確認してみてください。小さな裁量を一つ取り戻すことが、自立の入口になります。
25. 思想する自由は、ほかの自由が失われても残ることがある
The French, however, had still preserved one liberty amidst the ruin of every other: they were still free to philosophise almost without restraint upon the origin of society, the essential nature of governments, and the primordial rights of mankind.
しかしフランス人は、ほかのあらゆる自由が崩れる中で一つの自由を保っていた。社会の起源、政府の本質、人間の根源的権利について、ほとんど制約なく思索する自由である。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『旧体制と大革命』第3編第13章(日本語訳は筆者訳)
行動へ参加する自由が乏しい社会では、思想が現実から離れて急進化することがあります。実務の制約を知らずに理想だけを組み立てると、実行したときの摩擦を見落としやすくなります。
考えを深めるだけで終わらず、一つ小さく試すこと。頭から抜け出し、現実から返ってくる情報を受け取ると、思想と行動の距離が縮まります。
26. 民主的な社会状態は、宗教と必ず対立するわけではない
It is a great mistake to suppose that the democratic state of society is necessarily hostile to religion: nothing in Christianity, or even in Catholicism, is absolutely opposed to the spirit of this form of society, and many things in democracy are extremely favourable to it.
民主的な社会状態が必然的に宗教へ敵対すると考えるのは大きな誤りである。キリスト教にもカトリックにも、この社会形態の精神と絶対に相容れないものはなく、民主主義には宗教へ非常に好意的に働くものも多い。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『旧体制と大革命』第1編第2章(日本語訳は筆者訳)
社会の変化を、古い価値の全面否定として単純化しない視点です。制度と信念は、歴史的な条件によって対立も協力もします。
二つの考えが衝突しているように見えたら、共通する目的を一つ探してみてください。全面的な賛否より、両立できる部分から考える方が現実的です。
政治の現実と自由を守るトクヴィルの名言
27. 革命を重ねすぎれば、安定した自由が遠のく
I had gained too much experience of mankind to be able to content myself with empty words; I knew that, if one great revolution is able to establish liberty in a country, a number of succeeding revolutions make all regular liberty impossible for very many years.
私は空虚な言葉で満足できないほど人間を経験していた。一度の大革命が国に自由を築くことがあるとしても、革命が相次げば、長年にわたり秩序ある自由が不可能になると知っていた。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『回想録』第2部第1章(日本語訳は筆者訳)
自由を求める変化でも、秩序を何度も壊せば、人々は安心と強い統制を求めるようになります。目的が自由であるほど、自由を持続させる手段を選ぶ必要があります。
完璧に作り直すより、続けられる改善を一つ選んでください。再出発を繰り返すより、小さな修正を積み重ねる方が自由を守れる場合があります。
28. 行政権の不安定さは、平時にも不安を生む
With a people among whom habit, tradition, custom have assured so great a place to the Executive Power, its instability will always be, in periods of excitement, a cause of revolution, and in peaceful times, a cause of great uneasiness.
習慣、伝統、風俗によって行政権へ大きな地位が与えられてきた国民にとって、その不安定さは、動乱期には革命の原因となり、平時には大きな不安の原因となる。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『回想録』第3部第2章(日本語訳は筆者訳)
権力の強さだけでなく、予測可能性も社会の安心へ影響します。重要な制度が頻繁に変われば、人々は長期的な判断をしにくくなります。
自分の生活でも、毎日変えない小さな土台を一つ決めてみてください。起床後に水を飲むなど、安定した行動が不確実さの中の足場になります。
29. 守るべきは特定の政権ではなく、社会を成り立たせる法である
I therefore determined to plunge boldly into the arena, and in defence, not of any particular government, but of the laws which constitute society itself, to risk my fortune, my person, and my peace of mind.
そこで私は大胆に闘いの場へ入り、特定の政府ではなく、社会そのものを成り立たせる法律を守るために、財産も身も心の平穏も賭けようと決意した。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『回想録』第3章「自らの行動方針について」(日本語訳は筆者訳)
人物や政党への忠誠より、社会を支える原則を優先する決意です。誰が権力を持つかと、どの手続きを守るかを分けて考える姿勢が表れています。
好き嫌いで判断が揺れそうなときは、自分が守りたい原則を一文だけ書いてください。相手が変わっても使える基準なら、判断の軸になります。
30. 誇張を続けると、現実を見分ける力が弱くなる
The inveterate habit contracted by all the politicians, during this long parliamentary farce, of over-colouring the expression of their opinions and grossly exaggerating their thoughts had deprived them of all power of appreciating what was real and true.
長い議会の茶番の中で政治家たちが身につけた、意見を大げさに彩り、考えをひどく誇張する習慣は、現実と真実を見分ける力を彼らから奪っていた。
出典:アレクシ・ド・トクヴィル『回想録』第1部第1章(日本語訳は筆者訳)
強い言葉は注目を集めますが、繰り返すうちに話し手自身も現実の程度を測れなくなることがあります。表現の誇張が、認識の誇張へ変わるという警告です。
「最悪」「絶対」「全部」と書きたくなったら、事実を一つ具体的な数字や出来事へ置き換えてみてください。認知の歪み、つまり極端に解釈する心のクセを少し緩められます。
トクヴィルの思想をほかの思想家と読み比べる
自由と社会の関係を考えるなら、ジョン・スチュアート・ミルの名言と読み比べると、個人の自由を守る視点の違いが見えてきます。
国家権力と秩序についてはトマス・ホッブズの名言、伝統と社会変化についてはエドマンド・バークの名言、習慣と人間の判断についてはヒュームの名言も参考になります。
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まとめ|自由は、参加と協力の習慣によって守られる
トクヴィルの30の言葉は、平等と自由が自動的に両立するわけではないことを教えます。人が孤立し、判断を多数派や中央権力へ委ねれば、民主的な制度の中でも自由は狭くなり得ます。
一方で、結社、言論、地方自治、異論を守る仕組みがあれば、平等は自由とともに育てられます。大きな政治へすぐ働きかけなくても、身近な場で意見を言い、誰かと協力し、自分で決める経験を失わないことが大切です。
今日できる小さな一歩は、他人へ任せず自分で決めたいことを一つ書くことです。自由は遠い理念ではなく、目の前の選択へ戻るたびに少しずつ形になります。
出典・参考文献
参考:Alexis de Tocqueville, Democracy in America Vol. I–II, The State of Society in France Before the Revolution of 1789, Recollections(Project Gutenberg公開版)。
