山本有三の名言25選|人生・教育・文化・言葉を支える信念

山本有三の1952年の本人肖像

執筆・編集:meigen89

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山本有三は、『路傍の石』『真実一路』で知られる小説家・劇作家です。同時に、戦後は参議院議員として、国語、教育、祝日、文化財、著作権などの制度づくりに深く関わりました。

この記事では、作品に刻まれた代表的な一文と、国立国会図書館の国会会議録に残る本人の発言から25の言葉を選びます。会議録では本名表記の「山本勇造」を確認し、同じ発言を細切れにせず、一つの会議・発言から原則一箇所だけを採りました。

文学者としての歩みをたどるなら、同時代の井伏鱒二の名言川端康成の名言と読み比べると、人間を見る眼差しの違いがよくわかります。

山本有三とはどんな人物か

山本有三(1887–1974)は栃木に生まれ、東京帝国大学でドイツ文学を学びました。戯曲から出発し、長編小説や子ども向けの文章でも、人が逆境の中でどう生きるかを描きました。

戦後は参議院議員を二期務め、文化委員長・文部委員長として議論を進めました。以下の言葉には、文学の理想だけでなく、資料を確かめ、異なる立場を結び、公共の仕組みを作ろうとする実務の声が響いています。

自分と人生を生かす言葉

1. たった一度の生を使い切る

たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないじゃないか。

出典:『路傍の石』/栃木市・山本有三文学碑

自分を生かすとは、目立つ成果を残すことだけではありません。自分に与えられた条件を引き受け、他人の人生ではなく、自分の判断で歩くことです。

この言葉が長く読まれてきたのは、励ましと責任を同時に含むからでしょう。一度きりという事実は焦りを生む一方、今日の選択を自分のものとして取り戻させます。

2. 暮らしと自然を切り離さない

戦時中に伐ったことが、今非常な水害で困っておりますけれども、あれとの関係がございませんか。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第1回国会 文化委員会観光事業に関する小委員会 第2号(1947年9月22日)(表記を一部現代化)

山本有三は、木を利用する生活上の必要を認めつつ、伐採と水害の因果を問い直しました。便利さの一面だけで判断せず、時間をおいて現れる影響まで見る姿勢です。

環境の問題は、善悪を一語で決めるより、利用と保全の関係を具体的に調べることから始まります。作家らしい想像力が、公共政策では先の暮らしを見通す問いに変わっています。

3. 総意かどうかを確かめる

この意見書というのは総会をお開きになって、そうして文芸家協会の総意というわけでありますか。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第1回国会 文化委員会出版関係小委員会 第1号(1947年9月26日)(表記を一部現代化)

「団体の意見」という言い方の背後には、誰がどの手続きで決めたのかという問題があります。山本有三は、主張の内容に入る前に、その代表性を確かめました。

多数の名を借りた発言ほど、合意の過程を見なければなりません。会議でも日常でも、肩書より手続きを問うことが、公平な対話の土台になります。

4. 好みより基準を先に置く

これがいいからこれを選ぶとか、あれはよそうとかいうような単純なことはできないので、選ぶだけの基準をもって選んでいかなければならんだろうと思うのであります。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第2回国会 文化委員打合会 第1号(1948年2月2日)(表記を一部現代化)

国民の祝日を選ぶ議論で、山本有三は個々の賛否より先に判断基準を整えようとしました。結論を急がず、異なる意見が同じ土俵で話せる物差しを用意する考え方です。

判断基準は万能ではありませんが、理由を他者と共有できます。好き嫌いだけでは対立する場面ほど、「何を大切にして決めるか」を言葉にすることが役立ちます。

5. 世論を議論の土台にする

世論調査部で集計したものがございますが、これを土台にして皆さんの御意見を伺っていきたいと思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第2回国会 文化委員打合会 第2号(1948年2月19日)(表記を一部現代化)

資料は結論の代わりではなく、議論を始める共通の土台です。山本有三は、数字を権威として押しつけるのではなく、専門家の意見を聞く入口に置きました。

データを読むときは、集め方や時代背景にも注意が要ります。それでも、印象だけで話すより、確認できる材料を共有することで対話は具体的になります。

『路傍の石』から読む

山本有三の人生観を物語の流れの中で確かめたい方は、代表作を版ごとに比較できます。

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教育・言葉・記録を考える言葉

6. 目に見える世論も拾う

新聞や雑誌等の世論を見ますと、科学祭をやったらどうだというような世論もございます。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第2回国会 文化委員会 第4号(1948年2月26日)(表記を一部現代化)

公式の請願だけでなく、新聞や雑誌に現れた声も検討材料にする。制度の外にある関心を見落とさない、観察者としての姿勢が表れています。

ただし、目立つ声が社会全体を代表するとは限りません。複数の資料を照らし合わせ、声の大きさと広がりを区別する慎重さも必要です。

7. 時間をかけた過程を尊ぶ

これは衆議院、参議院、両院が昨年の末以来研究し、調査し、また審議を重ねてきた問題であります。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第2回国会 文化委員会 第8号(1948年6月22日)(表記を一部現代化)

制度は一度の思いつきではなく、調査と審議の積み重ねで形になります。山本有三は法案の短さより、その背後にある長い検討を語りました。

目に見える成果だけを評価すると、準備の時間は消えてしまいます。仕事でも学びでも、結論に至る過程を記録することが、判断の再現性と信頼を支えます。

8. 重要な問いを記録に残す

速記が二十分間でなくなりますので、重要なものが残らないような質問になるべくしていただきたいと思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第2回国会 文化委員会 第9号(1948年6月29日)(表記を一部現代化)

限られた記録時間の中で、後に残すべき問いを選ぶよう促した言葉です。すべてを話すことより、何を公共の記憶に残すかを優先しています。

記録は未来の読者への説明でもあります。議事録やメモを取るとき、発言量ではなく、判断に必要な論点が残っているかを見る視点を与えてくれます。

9. 文化の議論を対立に閉じない

これは一つなごやかにやって、党派的な対立というよりも、およそ文教、文化というものは、そういうようなのがないほうがよいと思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第3回国会 文部委員会 第1号(1948年10月15日)(表記を一部現代化)

文化や教育には価値観の違いが伴います。それでも山本有三は、所属の対立を先に立てず、穏やかに議論できる場を守ろうとしました。

「なごやか」は、反対意見を曖昧にすることではありません。相手を敵に固定せず、論点に向き合える温度をつくることです。

10. よい質問を消さない

非常に急所を突いた質問がありました。それが速記に載らないのは非常に残念に思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第3回国会 文部委員会 第4号(1948年11月25日)(表記を一部現代化)

答えだけでなく、問いそのものにも価値があります。何が問題の核心かを示す質問が記録されなければ、後の人は結論の理由をたどれません。

教育や研究では、正解を保存するだけでなく、そこへ至る問いを残すことが重要です。問いの履歴は、次の検討を一段先から始めさせます。

文化を守り育てる言葉

11. 大きな問題ほど足元から問う

非常に大きな問題で、これから議会としては大分この問題をやらなければならんと思いますが、その前に極く簡単に文部当局に質問をしたいと思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第5回国会 文部委員会 第1号(1949年2月12日)(表記を一部現代化)

法隆寺の文化財保護という大きな課題に対し、山本有三はまず担当当局へ具体的な質問を向けました。問題の大きさに圧倒されず、確かめられる一点から始めています。

壮大なテーマほど、抽象論だけでは動きません。担当、経緯、資料、期限を一つずつ確かめることで、議論は現実の仕事になります。

12. 文化は党派を越える

これは文化問題でありますから、党派を超越した問題であると存じます。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第5回国会 文部委員会 第10号(1949年5月9日)(表記を一部現代化)

年齢の数え方を満年齢へ改める法案は、各党各派の発議者によって提出されました。生活文化に関わる問題を、陣営の勝敗だけにしないという宣言です。

立場の違いは消えなくても、共有できる目的は探せます。生活の安全、教育、文化財など、長く残る課題ほど、短期的な対立を越える視点が求められます。

13. 慎重な研究を急がせない

非常に長い間、多数の回数を重ねまして、相当に慎重研究をいたしました結果、この法案を出したわけであります。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第5回国会 文部委員会 第17号(1949年5月21日)(表記を一部現代化)

時間をかけたこと自体を誇るのではなく、影響の大きい法案には相応の検討が必要だと伝えています。速さと慎重さのどちらを優先するかは、問題の性質で変わります。

早く決めることが善になる場面もありますが、後戻りしにくい決定ほど確認を重ねる価値があります。重要度と可逆性を見て、考える時間を配分する知恵です。

14. 友情と公正を分ける

友人という立場もあり、また友人ということを離れて、公正にやってもらわなければなりません。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第5回国会 文部委員会 閉会後第2号(1949年7月13日)(表記を一部現代化)

親交のあった菊池寛の相続税をめぐり、山本有三は友人としての思いを認めたうえで、公正な扱いを求めました。私情を否定せず、公共の判断と区別しています。

利害関係があるときに必要なのは、感情がないふりではありません。関係を明らかにし、同じ基準が他者にも適用されるかを確かめることです。

15. 権限が大きいほど研究する

調査権のような問題は憲法にも触れてくる問題でありますし、非常に大事な問題であり、私たちのほうももう少し研究しないと言えないところがあると思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第5回国会 文部委員会 閉会後第12号(1949年10月13日)(表記を一部現代化)

文化財を守る目的が正しくても、調査権は人の権利に触れます。山本有三は目的の善さだけで手段を正当化せず、憲法との関係を研究しようとしました。

「まだ言えない」と認めることは、責任の放棄ではありません。重大な判断で不確かさを明示し、調べてから答える態度は、拙速な断定を防ぎます。

公正・対話・責任を支える言葉

16. 制度の現状を先に知る

元号を廃止するとか廃止せんとかいう前に、一体日本の現在の法律で年号の規定がどうなっておるかということは、真っ先にこの委員会が知り、同時にまた国民が知らなければいかんと思うのです。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第7回国会 文部委員会 第7号(1950年2月28日)(表記を一部現代化)

賛否を争う前に、現行制度がどうなっているかを共有する。山本有三の問いは、議論の順序を整えています。

前提が違うまま意見をぶつけると、対話は噛み合いません。まず事実と規則を確かめ、その後で価値判断を語る。この順序は、身近な話し合いにも有効です。

17. 不慣れを認め協力を求める

私は議事の進行等につきまして至って不慣れでございますので、皆様の御協力を得なければ到底やり得ないと思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第7回国会 文部委員会 第8号(1950年3月2日)(表記を一部現代化)

委員長に就いた山本有三は、役職の権威で弱みを隠さず、協力を求めました。不慣れを認めることが、参加者の力を引き出す入口になっています。

リーダーがすべてを知る必要はありません。自分の不足と目的を明確にし、助けが必要な箇所を言葉にすることが、共同作業を始めやすくします。

18. 重複を減らし議論を進める

なるたけ重複しないように願いたいのですが。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第7回国会 文部委員会 第11号(1950年3月17日)(表記を一部現代化)

短い一言ですが、限られた時間で論点を前へ進めるための司会の技術が表れています。同じ主張の繰り返しを減らし、新しい情報に場所を譲ろうとしました。

反復には強調の効果もあります。ただ、会議では既出の点を確認したうえで差分を述べると、参加者の時間を守りながら意見を追加できます。

19. 報告の空白をそのままにしない

去年の秋、委員会のほうから報告があったと思いますが、以後とうとう今日まで御報告がないのであります。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第11回国会 文部委員会 閉会後第1号(1951年8月20日)(表記を一部現代化)

制度を作った後にも、運用を見届ける責任があります。山本有三は文化財保護委員会から長く報告がないことを指摘し、経過の説明を求めました。

計画は実施して終わりではありません。途中の報告と検証がなければ、問題の発見も修正も遅れます。定期的に確かめる仕組みまで含めて仕事です。

20. 審議の前提を明らかにする

この問題を初めから申し上げて、この点をはっきりさせないと、今われわれのほうにかかっている著作権の問題を審議することができないと思います。

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」 第13回国会 文部委員会 第26号(1952年4月17日)(表記を一部現代化)

平和条約と著作権の関係について、山本有三は成立の経緯を先に説明するよう求めました。前提が曖昧なまま細部へ進む危うさを見抜いています。

複雑な問題では、問いを増やす前に土台をそろえる必要があります。何が決まっていて、何が未確定かを分けるだけで、議論の迷路を減らせます。

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