田山花袋は、日本の自然主義文学を代表する作家の一人です。『蒲団』『田舎教師』などの小説で知られますが、創作論『小説新論』では、読書、観察、経験、表現、構成について具体的な考えを残しました。
この記事では、田山花袋自身の創作論を中心に、意味が一続きで完結する言葉を25個選びました。旧仮名遣いは意味を変えない範囲で一部現代仮名遣いに整え、英語欄は原文に基づく自然な英訳です。
同時代の文学者の考えと比べたい方は、島崎藤村の名言、正岡子規の名言もあわせて読むと、明治文学に通じる観察と創作の姿勢が見えやすくなります。
行動と修業を支える言葉
1. できるかではなく、まずやってみる
Whether I can do it or not, I will at least try.
出来るか出来ないか、のるかそるか、自分の一生を棒に振るかも知れないが、兎に角やってみよう。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
結果が保証されるまで動かない姿勢では、創作も仕事も始まりません。花袋は、不確実さを引き受けて机に向かう決意を語っています。
迷っている作業を一つ選び、完成ではなく「最初の一行だけ書く」と決めて始めてみてください。
2. 精神と体を打ち込む
One must put both mind and body fully into the work.
もっと真剣に精神と体とを打ち込んでやらなければいけない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
技術だけを集めても、継続的な成果にはつながりません。集中する時間、体調、生活のリズムまで含めて取り組むことが、実力の土台になります。
今日の作業時間を25分だけ確保し、その間は通知を切って一つの作業だけに集中しましょう。
3. 生きた知識と経験を持つ
Writing requires living knowledge and living experience.
小説を書くほど、生きた知識と生きた経験とを要するものはない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
知識は覚えただけではなく、現実の場面と結びついたときに生き始めます。人の感情や生活を書くには、観察と経験の両方が必要です。
最近学んだことを一つ選び、「自分の生活ではどこに現れているか」を一文で書いてみてください。
4. 知らなくてよいものはない
For a writer, there is nothing that need not be known.
小説家には、何でも知らなくて好いというものはない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
花袋は、専門外を切り捨てず、広い世界に関心を向けることを勧めます。異なる分野の知識が、表現の厚みや判断の比較軸になります。
普段は読まない分野の記事を一つ開き、気になった用語を一つだけ調べてください。
5. 引っ込まず、現実にぶつかる
Do not remain withdrawn; go out and encounter things.
ぐずぐずして引っ込んでいては駄目だ。何にでも行ってぶつかってみる必要がある。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
頭の中だけで考えていると、現実とのずれに気づけません。小さく試し、人や場所に触れることで、想像は具体的な理解へ変わります。
考え続けている問題について、今日できる確認電話、検索、試作のどれか一つを実行しましょう。
広告
田山花袋の創作論を本で読む
『小説新論』や田山花袋の文学論を読むと、名言の前後にある創作観まで確かめられます。書籍の版や収録内容を確認して選んでください。
読書と学びを深める言葉
6. 本は人間生活の現れである
Every book is an expression of human life.
あらゆる本は、すべて人間生活の状態の「あらわれ」である。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
本を情報の容器としてだけでなく、誰かの経験や時代の空気が刻まれたものとして読む視点です。そう読むと、内容の奥にある生活まで見えてきます。
次に読む一節で、「この文章の背後にどんな生活があるか」を一度考えてみてください。
7. あらゆる書籍を広く読む
Aspiring writers should range widely through books.
小説志願者は、あらゆる書籍を渉猟することが肝心である。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
渉猟とは、分野を限定せず広く読み歩くことです。直接役立たないように見える知識も、後に別の経験と結びつきます。
本棚や電子書籍から未読の一冊を選び、目次だけを三分で眺めてください。
8. 他人の経験を読書から得る
Reading is a way to receive the experience of others.
さまざまな人の経験した知識を、読書から得る方法が一番安全である。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
自分一人が実際に経験できる範囲には限界があります。読書は、他者の成功だけでなく失敗や葛藤も、比較的安全に学べる方法です。
今抱えている課題と同じテーマの体験記を一つ探し、失敗例を一つメモしましょう。
9. 好きな本から読んでよい
Any book is fine; read what you genuinely like.
どんな本でも好い。自分の好きなものを読んで好い。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
学びを続けるには、義務感だけでなく好奇心が必要です。好きな本は集中を生み、読む習慣を再起動する入口になります。
今日は役立つ本ではなく、純粋に気になる本を五分だけ読んでください。
10. まず観察力を養う
The first necessity is to cultivate the power of observation.
一番先に、観察力を養うことが必要である。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
観察とは、見る量を増やすだけでなく、違い、変化、背景に気づく力です。これは創作だけでなく、仕事や人間関係の判断にも役立ちます。
目の前の物を一つ選び、色、形、傷、使われ方を30秒だけ丁寧に見てください。
観察と誠実さを磨く言葉
11. 観察は新しく独創的である
Observation must remain fresh and original.
観察はあくまで斬新で、そして独創的でなければならない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
既存の評判や先入観をなぞるだけでは、自分の発見になりません。自分の目で確かめ、自分の言葉で言い直すところに独創性が生まれます。
今日見たものについて、よくある形容詞を使わず一文で説明してみましょう。
12. 書かれていないことも読む
One must see not only what is written, but also what is left unwritten.
書いてあることばかり見るのではなく、書いてないことをも見なければならない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
文章の意味は、明記された情報だけで決まりません。省かれた事情、語られない感情、時代背景を考えることで理解が深まります。与謝野晶子の評論の言葉にも、既成の見方を問い直す姿勢が表れています。
読んだ文章から一文を選び、「なぜこの説明は省かれたのか」を一度問い直してください。
13. 一冊が多くの本と響き合う
When one has read widely, a single book echoes with ten or twenty others.
沢山読んで知っていれば、一冊読んだ本が十冊にも二十冊にもなって頭に響いて来る。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
知識は単独で保存されるのではなく、過去に読んだ内容と結びついて意味を増します。読書量は、比較と連想のネットワークを作ります。
今読んでいる内容と似た過去の本を一冊思い出し、共通点を一つ書いてください。
14. 広く深く独創的に学ぶ
Gain knowledge from reading broadly, deeply, and independently.
広くかつ深く、独創的に読書から知識を得る。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
広さだけでは浅くなり、深さだけでは視野が狭くなります。両方を往復しながら、自分の問題意識で読み直すことが重要です。
一つのテーマについて、入門記事と専門的な資料を一つずつ開いて比較しましょう。
15. 経験には待つ時間もある
Some experiences can only be understood by allowing time to pass.
実際の生活上の経験は、自然に待つよりほかに仕方がない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
努力しても、年齢や時間を経なければ理解できないことがあります。無理に結論を急がず、経験が熟す余地を残す姿勢も必要です。
今すぐ答えが出ない問題を一つ、「今月は保留」とメモして、今日できることだけに戻りましょう。
現実と人間を見つめる言葉
16. 公平で誠実な心を持つ
Maintain a fair and sincere attitude of mind.
つとめて公平な、誠実な心の態度を持たなければならない。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
鋭い批評も、反発や皮肉に支配されれば対象を歪めます。観察する側の誠実さが、理解の正確さを支えます。
誰かを評価するとき、欠点の前に事実を一つ、長所を一つ書いてから判断してください。
17. 一事一物をよく見る
Notice every event and every object carefully.
一事一物、すべてよく眼にとめて置く。
出典:田山花袋『小説新論』第1章「読書と実生活」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
大きな発見は、特別な事件より日常の細部から生まれることがあります。小さな違和感を見逃さない習慣が、表現と判断を磨きます。
今日の生活で「昨日と違うこと」を一つ探し、短く記録しましょう。
18. 個人を見てから全体を考える
Begin by observing individuals carefully before building a general view.
詳しく個人個人を観察した上に、築き上げて行かなくてはならない。
出典:田山花袋『小説新論』第2章「世相風俗」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
集団への印象だけで人を判断すると、現実の多様さを失います。個人の具体的な言葉や行動から全体像を組み立てる方が確かです。人物の細部から時代を見る点では、樋口一葉の物語の言葉も参考になります。
「この人たちは皆同じだ」と感じた場面を一つ思い出し、例外を一人探してください。
19. 不断の努力を続ける
Continuous effort on the part of the creator is essential.
「作者の不断の努力」ということが大切になる。
出典:田山花袋『小説新論』第2章「世相風俗」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
不断とは、激しく頑張り続けることではなく、途切れても戻りながら続けることです。積み重ねが観察の範囲と深さを広げます。
今日の作業を最低一分だけ行い、終えたら実行日を記録してください。
20. 倦まず撓まず一生続ける
One must continue without weariness or discouragement, as a lifelong task.
倦まず、撓まず、一生やる気で、努力するよりほかに仕方がない。
出典:田山花袋『小説新論』第2章「世相風俗」(旧仮名遣いを一部現代化、英訳は当サイト訳)
成果が遅い分野では、短期的な感情より復帰できる仕組みが重要です。止まらない人ではなく、止まっても戻る人が長く進みます。
中断した習慣を一つ選び、以前の半分以下の量で今日から再開しましょう。