幸福・成長・生きる力を考える名言
幸福は悲しみのない状態ではなく、生き生きと世界へ関わることから生まれる。成長を止めず、人間の可能性を信じる言葉を紹介します。
21. 人生とは、繰り返し生まれ続けること
I believe that one can attribute to life the significance of continuous birth and constant development.
私は、人生には絶えず生まれ、成長し続けるという意味があると考えます。
出典:エーリッヒ・フロム「Some Beliefs on Man, in Man, for Man」(1965年草稿、公式アーカイブ公開。日本語訳は筆者訳)
生きることは、過去に決められた自分を守り続けることではありません。習慣や関係を更新し、新しい可能性へ開かれる過程です。
再出発を大きな決断にしなくてもよいでしょう。今日の行動を一つ変えるだけで、新しい始まりは作れます。
22. 人生では、生を選ぶか死を選ぶかが問われる
The fundamental alternative for man is the choice between life and death.
人間にとって根本的な選択は、生を選ぶか死を選ぶかです。
出典:エーリッヒ・フロム「Some Beliefs on Man, in Man, for Man」(1965年草稿、公式アーカイブ公開。日本語訳は筆者訳)
ここでいう死は身体的な死だけではなく、無関心、機械的な反復、成長を拒む姿勢も含みます。生を選ぶとは、関心と創造性を働かせることです。
今日は、少しでも生き生きする行為を一つ選んでみてください。散歩、会話、読書など、小さな選択で十分です。
23. 幸福は、創造的で真剣な関わりから生まれる
Happiness should be something which results from the creative, genuine, intense relatedness.
幸福は、創造的で誠実な、深い関わりから生まれるものであるはずです。
出典:エーリッヒ・フロム「The Mike Wallace Interview」(1958年5月25日、公開記録。日本語訳は筆者訳)
幸福を快適さだけで測ると、不快な感情があるたびに失敗したように感じます。フロムは、人や仕事へ本気で関わることから生まれる充実を重視しました。
気分を上げることより、今の作業へ五分だけ集中する。関わりの質を変える方が、幸福へ近づく場合があります。
24. 幸福は、悲しみを排除しない
Happiness does not exclude sadness.
幸福は、悲しみを排除しません。
出典:エーリッヒ・フロム「The Mike Wallace Interview」(1958年5月25日、公開記録。日本語訳は筆者訳)
悲しい日があるから幸福ではない、という二者択一から離れる言葉です。大切なものへ関わるほど、喪失や心配も生まれます。
感情を直そうとせず、「悲しいままでもできること」を一つ選んでみてください。感情と行動は、同じ方向でなくてもかまいません。
25. 人間の可能性を信じる
I have a tremendous faith in the possibilities of man.
私は、人間の可能性を強く信じています。
出典:エーリッヒ・フロム「The Mike Wallace Interview」(1958年5月25日、公開記録。日本語訳は筆者訳)
人間は社会に形づくられますが、それだけで決まり切る存在ではありません。理解し、愛し、選び直す能力が残されているという信頼です。
自信がなくても、可能性まで否定する必要はありません。できる証拠を待たず、一分だけ始めることが、可能性を現実へ近づけます。
フロムの人間観をさらに広げたい方は、習慣と意志を考えるウィリアム・ジェームズの名言、自由と社会を問うハンナ・アーレントの名言も参考になります。幸福と理性についてはバートランド・ラッセルの名言、人間関係と勇気についてはアルフレッド・アドラーの名言と読み比べると、違いが見えやすくなります。
自分らしく生き、社会へ関わる名言
最後は、なれない自分を追う苦しさ、社会的責任、自動的に生きる危うさを見つめます。小さくても自分で選ぶ行為が、人間らしさを支えます。
26. 人は、なれない自分を追って人生を浪費する
So many people waste their life by trying to become what they could not be.
多くの人が、なれない自分になろうとして人生を浪費しています。
出典:エーリッヒ・フロム「Le Monde Dimanche」インタビュー(1979年、公式アーカイブ公開。日本語訳は筆者訳)
理想を持つことは力になりますが、自分の性質や条件を無視した理想は、自己否定を深めることがあります。可能性と限界の両方を見る必要があります。
他人の基準ではなく、自分が伸ばせることを一つ書いてみてください。比較をやめるより、比較の対象を昨日の自分へ変える方が実践的です。
27. 一人ひとりの内側に、人類全体がある
Every individual bears humanity inside himself.
一人ひとりの内側に、人類全体があります。
出典:エーリッヒ・フロム「Some Beliefs on Man, in Man, for Man」(1965年草稿、公式アーカイブ公開。日本語訳は筆者訳)
人はそれぞれ異なりますが、愛、恐れ、孤独、成長への願いを共有しています。個人を理解することは、人間そのものを理解する入口になります。
自分の弱さを人間失格の証拠にしないでください。それは、多くの人が抱える人間的な経験の一部でもあります。
28. 社会に責任を預けすぎない
We have relegated our own responsibility in what happens to our country to the specialists.
私たちは、自分たちの国で起きることへの責任を専門家へ預けてしまいました。
出典:エーリッヒ・フロム「The Mike Wallace Interview」(1958年5月25日、公開記録。日本語訳は筆者訳)
専門知識は必要ですが、判断まで完全に委ねると、市民としての責任が空白になります。情報を受け取ることと、自分で考えることは両立します。
すべてを理解しなくても、生活に近い一つの問題だけ一次情報を読む。それが責任を取り戻す小さな行為です。
29. 自動人形のように生きる必要はない
Man does not have to be an automaton.
人間は、自動人形のように生きる必要はありません。
出典:エーリッヒ・フロム「The Mike Wallace Interview」(1958年5月25日、公開記録。日本語訳は筆者訳)
予定、広告、周囲の期待に反応するだけの日々では、自分が選んでいる感覚を失いやすくなります。フロムは、人間が機械的な適応を超えられると考えました。
いつもの行動を一つだけ止め、「本当に今やるか」と問い直す。自動運転から戻るきっかけになります。
30. 進歩を選ぶ人は、新しい統一を見つけられる
The man choosing progress can find a new unity through the full development of all his human forces.
進歩を選ぶ人は、人間的な力を十分に発展させることで、新しい統一を見つけることができます。
出典:エーリッヒ・フロム「Some Beliefs on Man, in Man, for Man」(1965年草稿、公式アーカイブ公開。日本語訳は筆者訳)
過去へ戻ることで不安を消すのではなく、理性、愛、創造性を育てることで、分裂を超えていく道が示されています。
完璧な変化を目指さず、今できる最小の一歩を選ぶ。進歩とは、現実を一ミリ善くする行為の積み重ねです。
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まとめ|愛し、考え、選ぶ力を手放さない
エーリッヒ・フロムの30の言葉に共通するのは、人間を受け身の消費者や自動人形として見ない姿勢です。愛は学び育てる能力であり、自由は自分で判断する実践であり、幸福は世界へ生き生きと関わることから生まれます。
不安や孤独を一度に解消する必要はありません。相手の話を最後まで聞く、事実を一つ確認する、物を増やす代わりに一文を書く。今できる小さな行動へ戻ることで、「在ること」を選び直せます。
人間の可能性は、考えただけでは見えません。今日の一つの選択に表れたとき、少しずつ現実のものになります。
出典・参考文献
参考:Erich Fromm Online「Erich Fromm’s Credo」「Autobiographical Highlights」、Harry Ransom Center「The Mike Wallace Interview: Erich Fromm」(1958年5月25日)。引用は意味が完結する短い範囲にとどめ、日本語訳は筆者訳としました。