沢庵宗彭の名言30選|不動智・無心・鍛錬・執着を離れる禅の言葉

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本心は、水のように全身へ行き渡る

21. 一方へ心を置けば、九方が欠ける

Place the mind in one direction and the other nine are lacking; place it nowhere and none of the ten directions is lacking.

心を一方に置けば九方は欠けるなり。一方へも置かずば十方は欠けざるものなり。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「心の置所」段(古写本系統。英訳は当記事)

一つの課題へ集中することは必要ですが、集中と固着は異なります。目的に合わないと分かった後も同じ方向へ進み続けると、他の可能性が見えません。

一日の終わりに、進まなかった作業を一つだけ見直してください。努力量を増やす前に、方向を変える余地がないか確認します。

22. 固まった本心が、妄心になる

When the original mind gathers and hardens in one place, it becomes the deluded mind and the original mind is lost.

本心が一所に集まりかたまりてこそ、妄心となりて本心を失うものぞ。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「本心妄心」段(古写本系統。英訳は当記事)

妄心は別の心が外から入るのではなく、本来柔軟な心が一か所で凝り固まった状態だと沢庵は説明します。問題は心があることではなく、動けなくなることです。

強い決めつけに気づいたら、「必ず」「絶対」「もう無理」という語を別の表現に直してください。「今は難しい」に変えるだけでも、心の硬さが少しゆるみます。

23. 氷を溶かせば、水はどこへでも流れる

Ice and water are one, yet ice cannot wash hands or face; melt it into water and let it flow wherever needed.

氷と水とは一つなれども、氷にては手も顔も洗われじ。氷をとかして水となし、何へも流したきように流すべし。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「本心妄心」段(古写本系統。英訳は当記事)

心の本質が悪いのではなく、固まった形では役に立ちにくいという比喩です。知識も経験も、固定観念になれば応用できませんが、柔らかく使えば多くの場面を助けます。

過去の成功手順を一つ選び、今の条件に合わせて一部分だけ変えてください。守るべき目的と、変えてよい方法を分けます。

24. 無心は、全身に行き渡る心

No-mind is the same as the original mind: not fixed in one place, free of clinging calculation, it pervades the whole body.

無心とは本心に同じ。一所にかたまり定る事なく、分別も思案もなき時は、心一遍身に行き渡って有るものなり。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「有心無心」段(古写本系統。英訳は当記事)

無心は意識を失うことではありません。必要な感覚と動作に心が広く通い、余計な自己監視に遮られていない状態です。

慣れた作業をするときは、一度だけ手順を確認した後、途中の自己採点をやめてください。評価は終了後にまとめ、実行中は動作へ戻ります。

執着を消そうとせず、自然に離れる

25. 消そうとする心も、また心の荷物になる

The thought of removing what is in the mind becomes yet another thing within the mind.

この心に有る物を去らん去らんと思う心が、また心の内の有り物になる。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「有心無心」段(古写本系統。英訳は当記事)

考えを消そうと力むほど、その考えを監視し続けることになります。沢庵は、執着との戦い自体が新しい執着になる逆説を見抜いています。

嫌な考えが浮かんだら、「消す」代わりに「今はこの考えがある」と言葉にし、手元の動作へ戻ってください。存在を認め、追いかけない方法です。

26. 急いで無心になろうとすると、かえって遠ざかる

If you try to force it quickly, it will not go.

急にやらんとすれば、行かぬものなり。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「有心無心」段(古写本系統。英訳は当記事)

心の変化は、命令した瞬間に完成するものではありません。焦って整えようとすると、整っていない自分を監視し続け、緊張が増します。

落ち着こうとする代わりに、呼吸を一回長く吐き、次の具体的動作を一つ行ってください。状態の完成を待たず、行動から流れを作ります。

27. 達人の心は、水上のひょうたんのように留まらない

The accomplished person’s mind does not stop at things, like a gourd on water that slips aside whenever pressed.

至りたる人の心は、そっとも物に留らぬ事、水上のふくべを押す如くなり。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「水上打胡蘆子」段(古写本系統。英訳は当記事)

水上のひょうたんは、押されても抵抗してその場に固まらず、するりと別の位置へ移ります。強さを硬さではなく、圧力を受け流して働きを保つ柔軟さとして描いた比喩です。

予定外のことが起きたら、元の計画を守るか捨てるかの二択にせず、今日残せる最小部分を決めてください。形を変えて継続する力を育てます。

28. 心を生じながら、そこに留まらない

Bring forth the mind while doing the task, yet let it have no place where it abides; this is mastery in every Way.

心を生じてその事を為しながら、留まるところなきを諸道の名人とはいうなり。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「応無所住而生其心」段(古写本系統。英訳は当記事)

無心は、意志や注意を持たないことではありません。必要な心を起こして行動しつつ、行動後にそこへ執着を残さないことです。

一つの仕事を終えたら、成果を一度確認して閉じてください。何度も評価を繰り返さず、次の役割へ心を移します。

29. 花を見ても、花に心を置き続けない

See flowers and autumn leaves, let the seeing mind arise, yet do not let it remain there.

花紅葉を見ても、花紅葉と見る心は生じながら、その所にとどまらぬ心を専とするなり。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「応無所住而生其心」段(古写本系統。英訳は当記事)

美しさを感じないのではなく、感じた心を所有し続けない。沢庵は、経験を十分に受け取りながら、過ぎた後まで握りしめない態度を示します。

よい出来事があったら写真や記録を一つ残し、その後は次の時間へ戻ってください。喜びを否定せず、再現しようと追いかけすぎない練習です。

30. 前の心を捨て、後へ残さない

Cut off the interval between before and now; do not fasten the present mind to what follows.

前と今との間を裁ち切り、今の心をあとへ繋がず、断ち切って去れ。

出典:沢庵宗彭『不動智神妙録』「前後際断」段(古写本系統。英訳は当記事)

前後際断とは、記憶や計画を否定することではありません。終わった反応を次の瞬間へ持ち越さず、その都度必要な働きへ戻ることです。

失敗を思い返していると気づいたら、「次回は何を一つ変えるか」を書いて終了してください。過去から教訓だけを取り、感情の反復は次の行動へ渡しません。

関連書籍

『不動智神妙録』は、剣術の技法書というより、注意が一つに固着する仕組みと、稽古によって自由な働きを取り戻す過程を説いた心法書です。良寛の自然体の言葉と読み比べると、臨済禅の緊張感と、執着を離れる柔らかさの両方が見えてきます。

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まとめ

沢庵宗彭の不動智は、心を動かさないことではありません。状況を見て、考え、行動しながらも、敵、自分、道具、失敗、成功のどこにも心を固定しないことです。心が止まれば働きも止まり、心が全身へ行き渡れば持っている力を状況に応じて使えます。

また、無心を急いで作ろうとすることも新しい執着になります。消そうと力むのではなく、考えがあることを認め、必要な行動へ戻る。稽古を重ね、意識していた手順が自然な働きへ変わるまで、小さく続けることが大切です。

まずは今気になっていることを一つ書き、「事実」「解釈」「次の一分で行うこと」に分けてください。心を完全に静める必要はありません。次の働きへ移せるなら、それが不動智を生活に生かす最小の一歩です。

出典・参考文献

  • 佐藤錬太郎「沢庵宗彭『不動智神妙録』古写本三種・『太阿記』古写本一種」『北海道大学文学研究科紀要』第103号、2001年、24〜139頁。
  • 秋庭宗琢編『沢庵広録』1906年。『不動智神妙録』『太阿記』『玲瓏集』ほかを収録。
  • 沢庵宗彭著、市川白弦訳・注・解説『不動智神妙録/太阿記/玲瓏集』ちくま学芸文庫、2023年。
  • 本文の引用は古写本翻刻を中心に表記を読みやすく整えました。英訳と各名言の解説は当記事によるものです。
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